古くは巨人、横浜で活躍した駒田徳広、阪急・オリックスでプレーした藤井康雄が「満塁男」として有名。
現在は歴代1位・16本の満塁本塁打を記録する西武・中村剛也がよく知られるが、ここでは楽天の藤田一也を紹介したい。2012年途中にDeNAから移籍。クリムゾンレッドに袖を通してからの「フルベース活躍劇」が、まさに神ってるのだ。
今シーズンは76試合で285打席に立ち、打率.245、30打点(8月8日現在)。左肋骨の亀裂骨折もあり、例年と比べて調子を落としている。しかし、得点圏打率は.313と高く、満塁では10打数4安打9打点ととりわけ勝負強い。
ソフトバンクとの開幕戦が、藤田の満塁男ぶりをよく物語っている。
楽天は先発の則本昂大が立ち上がりに3失点。しかし、追う展開で迎えた2回裏、攝津正を一気呵成に攻め立てて5得点。試合をひっくり返した。このビッグイニングが物をいい逆転勝利を飾ったのだが、その2回、1死満塁で反撃の狼煙を上げたのが藤田だった。
真中高めに甘く入るストレートを左中間へ弾き返した藤田の当たりは、レフト・中村晃のダイビングキャッチをかいくぐって着弾。逆転の呼び水を誘う2点適時打になった。
去る7月23日ロッテ戦、延長12回裏にサヨナラ勝利を決めた立役者も藤田だった。
四球と安打で作った無死一、二塁。送りバントで1死二、三塁の形を作ると、ロッテは1番・岡島豪郎を敬遠。満塁策を取り、2番・藤田との勝負を選択した。
ここで、満塁男の登場にしめしめと思った楽天ファンは多かったはず。はたして2球で追い込まれた直後に打って出た当たりは一塁線へ転がるボテボテ。しかし、折からの降雨をも味方につけ、相手守備の乱れを誘うサヨナラ敵失になっている。
満塁に強いといっても、1シーズンだけの好成績ならよくある話だ。しかし藤田は例年、満塁に強い「筋金入り」。
楽天に移籍した2012年こそ無安打だったが、チームが日本一になった2013年の満塁での打率は.429、2014年は.313、2015年はグランドスラムを2本も放って.600。
移籍後通算の満塁成績は54打数(64打席)21安打、54打点。本塁打2本、二塁打5本、犠飛7本のほか、四球2つ、死球1つでも得点にからんでいる。三振は4つと少ない。打率は.389と好成績をマーク。移籍後に挙げた打点の約3分の1を、満塁の場面からで生み出しているのだ。
満塁での活躍劇が奏功し、今年発売された某社の人気野球テレビゲームの最新版でも、ついに「満塁男」の称号が付与されている。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。