まずは今季の西武を相手にソフトバンク以外で唯一、12勝8敗と勝ち越しているオリックス。西武はディクソンの3勝(2敗)を筆頭に、金子千尋に2勝(0敗)、松葉貴大に2勝(1敗)、山岡泰輔に2勝(1敗)を献上している。
順位は西武が3位でオリックスが4位。13ゲーム差をつけていても、オリックスの先発投手陣にこれだけ白星を挙げられていたら、どちらがAクラスにいるのかわからない。
西武ファンの筆者的に「マズい……」と思ったのは、8月25日から27日のホーム3連戦。初戦でディクソンを4回6失点KO。勝利を収めたことで波に乗れると思ったのだが、翌日の試合で山岡に西武戦2試合連続完封を許すと、3戦目では松葉を2回5失点で沈めながら9対10と打ち負けて連敗を喫した。
ちなみに松葉が挙げた今季の勝利はすべて西武戦。山岡に至っては唯一白星が先行している球団が西武だ。今季のオリックス戦は残り5試合だが、ローテション的には再びディクソン、山岡、松葉と相まみえることになりそう。4年ぶりのCS出場を果たす前に、なんとか借りを返しておきたいものである。
続いては7勝11敗と、西武にだけ黒星が先行している楽天。しかし、楽天が西武に勝った試合を洗い直すと、岸孝之が2勝(0敗)、美馬学が2勝(1敗)と2人で3つの貯金を稼いでいることがわかる。
昨季まで西武のエースだった岸は西武打撃陣の弱点を知っているはずなので、抑えやすいという面はあるのかもしれない。CSで楽天と激突する可能性が高い西武としては、この2人が登板してくると厄介なことになりそうだ。
そういった先を見越した戦いが必要になってくる最中に、8月16日の試合で美馬に土をつけたのは大きな収穫。一方、岸は楽天の対ソフトバンクローテーションのキーマンになったことで、残りの西武戦に登板するかは不明。CS前に叩いて、苦手意識を払拭しておきたいのだが……。
このまま岸と対戦することなくCSを迎えたら、いいイメージで投げてくるだろう。しかし、岸が登板した西武戦2試合はいずれも5月だったので、覚醒した山川穂高、復帰した森友哉や金子侑司とは対戦していない。
厚みが増したレオ打線と対峙する岸に、違和感を覚えさせられるか。西武は打撃陣に光明を見出したい。
最後はやはりというべきか、今季もここまでの対西武の成績を14勝7敗とダブルスコアにしているソフトバンクに触れたい。相変わらずの西武との相性抜群のソフトバンクは早くも8年連続の勝ち越しを決めたが、メットライフドームでの試合では3勝6敗と借金を抱えている。
西武としては「地元では蹂躙されまい」と意地を発揮しているので、相性が悪いのはソフトバンクというよりもヤフオク!ドームだと考えたい。あの四面楚歌の雰囲気が、獅子の力を半減させているのだと。
その証拠にヤフオク!ドームで負けている野上亮磨とウルフが、メットライフドームでは2勝を挙げ、1つずつ貯金を作っている。ホームの恩恵もあるだろうが、現状、勝てている投手をつぎ込んでいくのがタカ撃ちの最善策だろう。
とはいえ、メットライフドームでの残り3試合に勝つだけでは物足りない。十亀剣が戦列に戻り、岡本洋介が台頭して先発投手の数が揃ってきた今だからこそ、敵地でもさらなる攻勢をかけてもらいたい。
怒涛の勢いで13連勝を挙げるなど勝ちまくっていた西武だが、勢いが止まった今こそ真価が問われる。
ライバルは手強いが、さらに上位を目指すのなら厳しい戦いは避けて通れない。「むしろ望むところ」と真正面から突き進んでもらいたいものだ。
そして天敵を作るのではなく、ライバルの天敵になってほしい。今季は日本ハム、ロッテをお得意様にしているが、「百獣の王たるもの、常に食物連鎖の頂点たれ」と切に願う。
(成績は8月28日現在)
文=森田真悟(もりた・しんご)