仙台育英では1年の秋から4番に座り、2年の夏(2012年)、3年の春、夏(2013年)と3回、甲子園の土を踏んだ。優勝には手が届かなかったが、数々の印象深い打撃を披露している。
その最たる一打は3年時のセンバツで見せた「曲打ち」だろう。2回戦の創成館(長崎)との試合で、完全なワンバウンドのボールを見事にセンター前に打ち返してみせた。
イチロー(マーリンズ)がオリックス時代に披露したことがあるが、高校生がやったとあって大歓声が湧いた。そんななか、颯爽とダイヤモンドを駆けて二塁まで陥れた上林に、あらためて「ただ者ではない」と感じたのは筆者だけではないだろう。
3年の夏の甲子園、上林は大不振。逆に苦い記憶を残してしまった。
2年の夏は3試合で11打数5安打、3年の春も3試合で9打数3安打と結果を残しており、2年の秋の明治神宮大会でもチームを優勝に導く活躍。しかし、最後の夏に2試合で9打数1安打とブレーキになってしまった。
走攻守揃った強豪チームの中心選手として常に日の当たる道を通り、ドラフトの有力候補に挙げられてきた上林だったが、ラストチャンスというプレッシャーには勝てなかったのか。
ただ、それも人間味という部分ではとても魅力的に映る。
超高校級の打者は練習でも逸話を作るものだが、上林も例に漏れず。高校通算では23本塁打。自身では「ホームランバッターではない」と自覚しているが、飛ばす力はハンパない。
仙台育英のグラウンドは両翼100メートル、中堅125メートル。高さ10メートルのバックスクリーンも備えているのだが、上林はそれを越す打球を放っていた。
そのため上林の打撃練習後には、グラウンド外の道路にボールがゴロゴロしと転がっていたという。
あるとき部室まで飛んだボールの飛距離を図ったところ、170メートルクラスだったことが判明。フリー打撃とはいえ、さぞかし気持ちよかったことだろう。長年、仙台育英を指揮する佐々木順一朗監督は「(ここまで飛ばしたのは)過去に上林だけ」と語っている。
西武ファンにとっては返す返す「逃した魚は大きい」と感じるが、ライバル球団に入団しても地元出身選手だけに上林の動向は気になるものだ。
3年夏の甲子園後、上林は高校生日本代表チームの一員として第26回AAA世界野球選手権大会にも出場した。2020年の東京五輪、2021年のWBCで再び日の丸を背負う選手へと成長してほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)