エルドレッドがしっかりとらえた打球は果てしなく飛んでいく。本人の応援歌にある通り、その「無限のパワー」が最大の魅力。しかし、豪快な打撃とは対照的に、そのプライベートは実に庶民的だ。
エルドレッドは、広島市にある自宅からマツダスタジアムまでの「通勤」に、自転車を使っている。しかも、その自転車はアスリート仕様のものではなく、チャイルドシートをつけたいわゆる「ママチャリ」だ。
196センチ122キロの巨体でママチャリにまたがる姿には違和感を禁じえないが、野球選手らしからぬ庶民的な姿はとても愛嬌があり、好感が持てる。広島市内では自転車に子どもを乗せたエルドレッドをしばしば目撃されており、その光景はファンにとってお馴染みのものだ。
異国の地からやってきて、しっかりと地域に馴染んでいる姿からは、エルドレッドがいかに日本文化に溶け込んでいるかが伝わってくる。この親近感がファンの心をつかんで離さない大きな理由だ。
現在、球場で最も大きな声援を浴びる選手は、広島の8回を守る豪腕セットアッパー、ジャクソンだ。
昨シーズン、加入したジャクソンは無敵のセットアッパーとしてチームのリーグ優勝に貢献。今シーズンもここまで安定した投球を見せている。
ジャクソンがファンから愛される最大の理由は何か。それは、登板後に見せる最高の笑顔に尽きる。
8回を無事に投げ終えると、鬼の形相で大きな雄叫びを一発。そこから一呼吸置き、次の瞬間、溢れんばかりの笑みをニッコリと浮かべるのだ。そのビッグスマイルを見たファンは漏れなくジャクソンの虜となってしまう。
「日々過ごしていたら悪いときもあるが、笑顔が消えて悲しい人生を送りたくない。だから、笑顔を絶やさず生きていたい」
これが、ジャクソンがビッグスマイルを見せる理由。ただ陽気なだけではない。その笑顔には「人生の深み」が秘められているのだ。
広島のファンに笑顔を届けるために今日も奮闘するジャクソン。ファンは大声援でその背中を押す。
広島が誇る最強エースのジョンソンもファンから絶大な支持を得ている。外国人史上2人目の沢村賞を獲得した実績はもちろんだが、ジョンソンもエルドレッドやジャクソン同様に、プライベートの姿でもファンの心をつかんでいる。
父方の祖母が日本人ということもあり、もともと日本への関心はあったという。広島移籍後は、妻のカーリーさんと広島の様々な観光地を巡っている。その様子はカーリーさんのブログでしばしば紹介されていて、夫婦で日本の文化を楽しんでいる様子を見ることができる。
傑作だったのは、たまたま広島市街を散策中のジョンソン夫妻が、あるテレビ番組の街灯中継で見切れていたこと。いや、見切れたというより、自らカメラに映りこみにきていた……。そのとき、ネット上で大騒ぎになった。そんなお茶目な一面も、人気に拍車をかける一因となった。
ここで紹介した3選手は好成績を上げていることもあるが、一般の人々と同じように普段の生活に溶け込んでいる姿を見せてくれる。
野球選手という特殊な職業でありながら、どこか身近な存在に思わせてくれる。その人間味に虜にされるのだ。
ほかにも、優勝後のビールかけで異常なテンションを見せ、話題となったヘーゲンズや、常に首を傾げたスタイルがジワジワと人気を呼びつつあるブレイシアなど、広島の外国人選手はキャラクターの宝庫。今後も成績、プライベートともにファンを喜ばせてほしい。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)