横山は2014年にドラフト1位で入団した期待の左腕だ。しかし、「ドラ1」ではあっても、有原航平(日本ハム)、山崎康晃(DeNA)の「外れ外れ1位」。阪神がこの年、もっとも欲しかった投手、というわけではなかった。
ちなみに、藤浪は2012年の堂々たるドラフト1位。4球団競合の末に、当時の和田豊監督がクジを引き当て、将来のエース候補として鳴り物入りで入団した。
高校時代の甲子園の戦歴でも、横山と藤浪ではその差は歴然としている。
藤浪は大阪桐蔭3年時にいわずと知れた甲子園春夏連覇を達成。大谷翔平(日本ハム)と並び、彼らの世代が「大谷・藤浪世代」と呼ばれるくらい当時から注目度は高かった。
横山は山形中央2年時に春夏連続で甲子園出場を果たすも、いずれも初戦敗退。3年秋にプロ志望届けを提出したが、どの球団からも声がかかることはなかった。
同じチームの選手は、チームメイトでもありライバルでもある。同じポジションならば、誰かがレギュラーを取れば、別の誰かは必然的に控えにまわる。
この状況は投手であっても変わらない。
1軍の先発枠は、どのチームも最大で6枠しかない。この数少ない先発枠を競い、キャンプ、オープン戦と各選手はしのぎを削っているのだ。
横山はキャンプ、オープン戦と結果は残してはいたが、6人の先発枠に入れずに開幕を迎えた。
そして、ようやく4月23日に登板機会を得た。5イニングの投球だったが、しっかりと勝利投手の権利を持って、リリーフ陣に後を託した。藤浪の代役として、首脳陣の期待に応える結果ではあった。
ただ、横山にとっては決して満足すべきものではなかったはずだ。いや、満足していてはいけない。
同じ1994年生まれの横山と藤浪。これまでのキャリアは藤浪には及ばないが、藤浪は横山にとってライバル以外のなにものでもない。藤浪の代役で甘んじていてはいけないのだ。
「藤浪の代役」と言われるのではなく、今度はローテを実力で奪い取り、主役としてマウンドに上がってきてほしい。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。