熊本市立必由館高校で甲子園に出場した山中は、九州東海大、Honda熊本と「熊本一筋」で野球を続け、2012年ドラフト6位で福岡ソフトバンクホークスに入団。
その年、27歳。“オールドルーキー”として、また即戦力候補として期待されていた。しかし、開幕5戦目の西武戦に先発するも、3回1/3を投げて4失点。黒星デビューとなった。
1年目は結局、1軍で17試合に登板して未勝利も、ファームでは10勝を挙げて最多勝を獲得。翌年の活躍が期待された。
しかし、7月にトレードで東京ヤクルトスワローズへ移籍。
まだ2年目。しかも2軍で18試合に登板して3勝を挙げている投手を放出した理由には、当時、松田宜浩が骨折して全治6週間の重傷を負ったことも関係している。
代役・吉村裕基がその穴を埋めるも、ケガでこれまた戦線離脱。ソフトバンクの内野陣は非常事態となり、ヤクルト・川島慶三、日高亮)と新垣渚と山中の2対2の交換トレードが成立する。
2014年は未勝利に終わったものの、翌2015年の6月にプロ入り初勝利をマークし、そこから6連勝を記録。ヤクルト14年ぶりのリーグ優勝に貢献した。
そして今季も、5月10日現在2勝を挙げ、連覇を目指すヤクルトになくてはならない存在となっている。
5月3日のDeNA戦では、今季初完封をマーク。ヒーローインタビューでは「ヤクルトも熊本も負けないように頑張っていきましょう」とエールを送った。
山中は、今では希少ともいえるアンダースロー投手。
最速120キロ台のストレートと、80キロ台のスローカーブなど多彩な変化球を駆使して、相手打線を手玉に取るピッチングスタイルが持ち味だ。
アンダースローといえば、渡辺俊介(元ロッテ)、牧田和久(西武)の2人は、WBCなどの国際舞台で活躍した。特にアメリカやキューバなど、パワーヒッターの多い国には、目先を狂わすアンダースロー投手が重宝されている。
今後の活躍次第では、侍JAPAN選出の可能性だって夢ではない。
球数による登板制限のあるWBCで、牧田、山中と2人のサブマリンをベンチに置くことは、相手打線の脅威になること間違いなし! 小久保監督、ぜひともよろしくお願いします!
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住。ライター、イベント関連など、スポーツ関連の仕事を精力的にこなしている。北海道生まれなのに、ホークスファン歴約40年。GWに開催された札幌ドームのHOKKAIDOシリーズはビジター席が取れず、肩身の狭い思いをしながら観戦。内川のホームランの時、周りにばれないように小さなガッツポーズをする小心者である。