武田は関東一高、立正大を経て2001年にシダックスに入社。社会人野球では同僚の野間口貴彦(元巨人)とともに左右両輪のエースとして活躍した。
当時のシダックスの監督は名将・野村克也。2003年のドラフトでは、野間口と武田が同時に指名を受ける可能性があったが、武田はチームの戦力低下を案じた野村監督への義理にこたえる形でシダックス残留を選んだ。
2005年、武田はドラフト4位で日本ハムに指名された。仮契約の会場はシダックス出身ということもあり、カラオケボックスの「渋谷シダックスビレッジクラブ」で行われた。
プロ入り1年目から1軍登板を果たしたが、プロ初勝利はシダックスを辞めた野村監督が率いる楽天戦。思いもよらぬ形で師匠への恩返しを果たした。
武田の現役時代のトピックスといえば、2011年の「5試合連続で味方の完封負けによる敗戦投手」だろう。これは2リーグ制以降では史上初の珍記録。これだけ徹底的な「無援護」でも決して腐ることなく前向きなコメントを続けて、逆に武田は男を上げた。
そんな武田が現役引退を表明した際、武田は球場のベンチを訪れ、「俺のために優勝しろ!」の張り紙を持参して選手に檄を飛ばした。この張り紙は優勝決定の瞬間までベンチに張り続けられていた…。
飄々と投げて、颯爽と去った武田。将来的には指導者としてチームに戻る含みを持たせたが、当面は「自分を磨くために勉強したい」とコメント。
とりあえずファンとしては、来季の野球中継の解説あたりでクールな武田節をじっくりと聞かせてもらいたい!
文=サトウタカシ (さとう・たかし)