エントランスをくぐって階段を降りていくと、まず目に飛び込んでくるのが話題の選手のグッズを展示するコーナー。タイムリーなものが飾られており、野球の“今”を教えてくれる。
筆谷さんによると6月からイチロー(マーリンズ)のグッズが飾られているそう。
「ピート・ローズ(元・レッズほか)のメジャーリーグ記録である最多安打を、日米通算で破った試合のユニフォーム、メジャー3000本安打を達成した試合のユニフォームも展示することができました。今後、イチロー選手のようなプレーヤーが現れるのか、なかなか難しいですよね。そう考えると、国宝クラスのグッズといってもいいのではないでしょうか」
“今”を感じながら次に左へ曲がると、現在の12球団の監督や選手のグッズを飾っているコーナーへ。これらは常設展示で、監督や選手、ユニフォームのデザインなどの変化に合わせて、展示物はシーズン前に更新される。
「春季キャンプの頃に、『◯◯選手のバットをお願いします』といったふうに、各球団にリクエストを出します。そして寄贈という形でご協力頂き、展示させていただいているんです。DeNAの三浦大輔投手や広島の黒田博樹投手ら、今季で引退される選手のグッズは今年度で見納め。ぜひ、今のうちに見ておいていただきたいですね」
また、このコーナーの中央には、1972年から1981年にかけての日本シリーズで優勝したチームに贈られた内閣総理大臣杯も展示されている。往年のファンにはたまらない!
続いては、プロ野球の歴史に触れることができるコーナーへ。中央には、野球殿堂博物館が東京ドームに移転した当時に、世界記録を達成していた選手の記念品が並んでいる。また、壁際には三冠王を獲得した選手や完全試合達成者の名前が入ったパネル、プロ球団の変遷がわかるパネルなどが飾られている。
そして、このコーナーには年季の入った鏡やダッグアウトのベンチも見える。
「野球殿堂博物館は、旧後楽園球場の跡地のそばにあるので、後楽園球場で使っていた素振り用の鏡やダッグアウトのベンチなど、後楽園球場ゆかりの品も展示しています。変わり種では『荒川道場』で一本足打法を特訓したときに王貞治さんが振っていた日本刀や、長嶋茂雄さんと松井秀喜さんが国民栄誉賞をダブル受賞したときに、長嶋さんに贈られた金色のバットもありますよ」
さらに順路を進むと、次は野球そのものの歴史がわかるコーナー、そして、「いつ、どのようにして日本に野球が伝わったのか」を解き明かすコーナーが現れる。
ここには1934年に開催された日米野球のポスターが飾られているのだが、そのポスターはとにかくベーブ・ルース(元・ヤンキースほか)推し! 大きくベーブ・ルースのイラストが配置され、その下に「野球王 ベーブ・ルース」という文句が見える。
「このポスターは、日本に行くことを渋るベーブ・ルースを説得するときに使われたと聞いています。担当者がこのポスターをベーブ・ルースに見せたところ、『日本に行こう!』と首を縦に振ってくれたそうです」
ちなみにこのコーナー中央のケースには、メジャーリーグで活躍した日本人選手のベースボールカードや、昔の日米野球のチケットなどが並べられているので、今のものとの違いを楽しむのもいいだろう。
プロ野球コーナー、野球の歴史コーナーときたら、次はアマチュア野球のコーナー。高校野球、大学野球、社会人野球、軟式野球、少年野球、女子野球とすべてのカテゴリーのグッズを見ることができる。またその奥にはオリンピックとWBCブースも展開されている。
「アマチュア野球のコーナーには、春夏の甲子園大会と都市対抗野球大会の優勝チームのユニフォームを飾っています。WBCブースには、ユニフォームのほかに優勝トロフィーも展示。WBCのトロフィーはティファニーの銀製です。優勝を逃した第3回大会のトロフィーがないのが残念ですが、来年のWBCでの優勝を期待しています」
オリンピックとWBCのコーナーを抜けると、広々とした荘厳な空間が現れる。
野球殿堂ホールだ。ここには正力松太郎を筆頭に、歴代の野球殿堂表彰者・192名のレリーフが掲額され、その栄誉を讃えている。
「レリーフの元となる顔の表情や帽子は、ご存命の場合にはご本人の希望を承っております。例えば、今年、殿堂入りしたソフトバンクの工藤公康監督は、様々なチームで現役を送ったので『帽子はなしで』となりました」
野球殿堂博物館のアプリをスマートフォンにダウンロードして、レリーフにかざすとプレーの動画を見ることができるというサービスも。ぜひお試しあれ!
殿堂ホールを抜けたあとは、企画展の部屋へ進む。取材時に行われていたのは「グラブ展」(10月23日終了)で、11月10日からは「日本野球ポスター展2016」が開かれる。
「野球殿堂博物館には、約4万点のグッズがあります。でも、常時展示できるのはそのうちの2000点くらい。そこで、なるべくいろいろなものを見ていただけるように企画展を行っているんです。企画によっては人気投票を行ったり、お客様の参加型企画にしていますので、楽しんでいただきたいですね」
この館内にはまだまだ貴重な品々が眠っている……。そう思うとワクワクしてくる。今後の企画も楽しみに待ちたい!
これらのほかに、約5万点の野球に関する書籍・雑誌・パンフレットが揃う「図書室」や、イベントホールなどもある。「図書室」はスポーツ記者やスポーツライターの利用が多いが、自由に入ることができるので、野球ファンは、ぜひ「気になること」を調べに来てほしい。
このようにたくさんのコーナーからなる野球殿堂博物館。来館者のなかには「こんなに広いとは思わなかった」と漏らす方もいるそうだ。
また東京ドームの一角にあることから「プロ野球のグッズだけ」と思われがちだが、実際は、アマチュア野球や野球そのものの歴史にも触れることができる。見聞が広がること請け合いだ。野球殿堂博物館を訪れることで、今よりももっと野球が好きになるはずだ。
文=森田真悟(もりた・しんご)
野球殿堂博物館
■住所
〒112-0004 東京都文京区後楽1-3-61
東京ドーム21ゲート右
[TEL] 03-3811-3600
[FAX] 03-3811-5369
■開館時間
3月〜9月 10時〜18時
10月〜2月 10時〜17時
※入館は閉館時間の30分前迄
■入館料
大人 600円(500円)
高・大学生 400円
小・中学生 200円(150円)
65歳以上 400円
( )内は20名以上の団体料金
■休館日
月曜日
(但し、祝日、東京ドーム野球開催日、春・夏休み期間中は開館)
年末年始(12月29日〜1月1日)