背番号31の男たちが持つ、カレーへのこだわり
来季の所属チームがどこになるのか、去就が注目されるイチロー。
かたや、今季、阪神の躍進を支えた打撃陣を陰ながらサポートした掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター。
この2人には、いくつかの共通点がある。
1つは背番号「31」。
1つは時代を代表する左打者であること。
そして、もう1つがカレーライスの食べ方だ。
「イチローとカレー」についてはあまりにも有名なため、まずは「掛布雅之とカレー」の関係性について掘り下げてみよう。
高校までを千葉県の実家で過ごした掛布。1973年のドラフト6位で指名され、阪神に入団したわけだが、最初に苦労したのが食生活だったという。
というのも、掛布の実家は料理店を営んでいたこともあり、たとえば、みそ汁にしても、昆布と鰹節でダシをとるこだわりがあった。それがいきなり関西の煮干しダシのみそ汁になったことで、体が受け付けなかったのだ。ご飯の固さも、固めだった実家に比べて、寮のご飯がやわらかめだったのも地味に堪えたという。
そんな中、掛布が好んで食べていたのが寮のカレーライスだった。ダシも何も関係ないカレーのおかげで、体を作ることができたといえるだろう。
やがて、結婚して寮を離れた掛布。結婚後の食生活でも、一番楽しみにしていたのが安紀子夫人の作る特製カレーライスだった。ニンニクを入れてスタミナを、リンゴのすり下ろしを加えてまろやかさにこだわったカレーが、掛布の口にマッチし、普段は無言で黙々と食事を摂る掛布も「ウン、こりゃおいしい」と喜んだという。
「ただね」と安紀子夫人は『プロ野球スター選手のスタミナ大作戦』(キングブックス)の中で述懐する。
「ただね、主人は少し変わっているんですよ。カレーライスには肉がつきものというのに、どういうわけかカレーライスの肉だけは食べないんです。だから、肉はダシをとるだけで……もったいないから、私だけはいただくんですけどネ」
さて、ここで「イチローとカレー」に話が移る。何を隠そう、イチローもカレーが大好物にもかかわらず、ビーフカレーの中の牛肉はダシガラだからと、「肉」には口をつけないのだ。
こんな変わった食べ方が一緒である、ということが、背番号以上に不思議な共通点といえるのは間違いない。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)
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