『野球太郎』が阪神の補強ポイントに挙げたのは「将来のエース候補」、「遊撃手」、「リリーフ型投手」、「高校生内野手」、「即戦力投手」だった。「将来のエース候補」から順に指名結果を見ていこう。
今季、規定投球回に達した投手は、セ・リーグでは1番多い4名の阪神。若手では藤浪晋太郎が入団から4年連続2ケタ勝利を逃し、安定感に欠けるところはあるが左腕の岩貞祐太が飛躍し10勝を挙げた。
だが、ベテラン陣に目を向けると能見篤史に衰えが見え始め、昨季まで2年連続で先発ローテを張った岩田稔は防御率8.85と苦しんだ。
新たな若い力が必要不可欠の阪神の先発陣。今回のドラフトでは若い将来性のある高校生投手を2人指名した。
3位指名の才木浩人(須磨翔風高)は長い腕を柔らかく使い投げ下ろして、スピンの効いた最速148キロのストレートと、フォークなどの切れ味のある変化球を操る投手。ただ、187センチと長身ながら細身でまだ体ができているとは言い難い。体ができてくれば大化けする可能性を秘めている。
4位指名の濱地真澄(福大大濠高)は球速以上に力のある最速150キロのストレートと制球力が武器。中学時代からすでに140キロ以上を投げる投手として注目されていた大器。今夏の福岡大会ではまさかの初戦敗退となったが、こちらも将来性が高い。
長年、遊撃のレギュラーに君臨した鳥谷敬は衰えが目立ち、今季は三塁での出場も多かった。今季はブレイク中の北條史也が遊撃のポジションを奪う勢いを見せたが、それでも遊撃手の整備を急ぐ必要がある。
ドラフト1位の大山悠輔(白鴎大=写真)は、高校時代は遊撃手としてのプレー経験があるが、大学では三塁を守ることがほとんど。
遊撃手が本職の選手の指名はなかった。
今季のリリーフ陣を見ると新外国人のマテオ、ドリスが活躍。だが、今季20試合以上登板した日本人のリリーフ投手で若手といえるのは松田遼馬と島本浩也のみ。
起用法が安定しなかったこともあるが、4年ぶりに阪神に復帰した藤川球児は全盛期の活躍にはほど遠く、安藤優也も来季で39歳といつまでも頼るわけにはいかない。
しかし、今回のドラフトで獲得した投手はいずれもチームで先発を担っていた投手。阪神のチーム事情から、リリーフで使うケースが出てくるかもしれない。
20歳前後の野手が少ない阪神。今年は有望な高校生内野手もいたが、外野手も含め高校生野手の指名はなかった。
即戦力投手という点では2位指名の小野泰己(富士大)には可能性がある。しなやかなフォームから投げ込まれるスピンの効いた最速152キロのストレートが一番の武器だ。
小野は「藤川さんのような火の玉ストレートを投げたい」と話している。藤川に学び、さらなるストレートのレベルアップを果たしてほしい。
【総合評価】55点
ドラフト会議直前には佐々木千隼(桜美林大)を指名するという話も出ていたが、結果的には金本監督の一声でまさかの三塁手・大山を単独指名した阪神。
急整備が必要な遊撃手には吉川尚輝(中京学院大)や京田陽太(日本大)といった有望選手がいただけに、大山の1位指名でよかったのかと疑問を持つファンもいるかもしれない。
それでも大山は侍ジャパン大学代表で4番を打つなど力は十分にある。スタメンクラスでスラッガータイプと呼べる選手は、今季ブレイクを果たした原口文仁くらい。それだけに長距離砲の獲得も急務ではあった。大山の打撃力が順調に伸びれば、主軸を任せられる。
また、将来性のある才木、濱地の高校生投手に加え、最速152キロのストレートを投げ込む6位の福永春吾(徳島インディゴソックス)も楽しみな投手。年々球速を上げているだけにさらなる球速アップも見込める。
足りないポジションの補強よりも将来性を重視したドラフトになった阪神。「答え合わせ」の現時点での総合評価は55点だが、指名選手の活躍次第で低い点数も「正解」だったと振り返ることができる。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)