新型コロナウイルスの影響で「野球ロス」が続いている。日本ではNPBをはじめアマチュア野球の開催もない。世界を見渡してみても台湾が無観客で開催しているくらい。まさに世界中の野球ファンが飢えているといっても過言ではない。
そんななか、SNSなど上ではベストナインや名場面など過去を振り返りつつ、議論をしながら思い出を掘り返しているファンも少なくない。
そのなかのひとつに「最強世代」論争がある。プロ野球における「最強世代はどの世代なのか?」は永遠のテーマだろう。 歴史を超えて戦うことができない以上、頭の中で妄想するしかないのだが、現時点では間違いなくこれだ、という世代がある。
団塊の世代と呼ばれる「1947年生まれ世代」(1947年4月2日〜1948年4月1日生)である。
1947年生まれ世代が現役で活躍したのは、1960年代後半から1980年代にかけてとなる。現在のようにインターネットで簡単に情報をやり取りできる時代ではないため、「世代」で括られる機会はそう多くなかったはずだ。
まずは投手。鈴木啓示(元近鉄)、平松政次(元大洋)、堀内恒夫(元巨人)と200勝に到達している投手が3人もいる。3人に続くのが、191勝を挙げている松岡弘(元ヤクルト)。
勝利数では及ばないものの江本孟紀(元阪神ほか)に安田猛(元ヤクルト)、木樽正明(元ロッテ)、佐藤道郎、山内新一(ともに元南海ほか)、松本幸行(元中日ほか)などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。
また、シーズン最多死球のNPB記録を持っている森安敏明(元東映)もこの世代だ。森安は黒い霧事件で永久追放されてしまったが、高卒でプロ入りし4年連続2ケタ勝利をマークするなど実力があったことは間違いない。
先発ローテーションを組んだなら、鈴木、平松、堀内、松岡、江本、木樽、山内、松本とローテーションは余ってしまうほど。リリーフにも安田と佐藤がおり安心だ。
しかし、当時は先発ローテーションが現代ほど確立されていない時代だったこともあり、「もっと投げさせろ」の声が飛んできたかもしれない。
3人の200勝投手が生まれたこの世代だが、野手もすごい。2000安打到達者が5人もいる。「世界の福本」こと福本豊(元阪急)に「不惑の大砲」こと門田博光(元南海ほか)に「ミスタースワローズ」の若松勉(元ヤクルト)もそうだ。さらには谷沢健一(元中日)に藤田平(元阪神)…。
その他にも横浜で監督を務めた大矢明彦(元ヤクルト)や水谷実雄(元広島ほか)など、投手に負けず劣らずのメンバーがそろう。ドラフト史に残る「荒川事件」の当事者である荒川尭(元ヤクルトほか)やプロゴルファーの福嶋晃子の父である福嶋久晃(元大洋ほか)もこの世代だ。
また、外国人選手ではレロン・リー(元ロッテ)がいる。現時点で4000打数以上におけるNPBの通算打率トップは青木宣親(ヤクルト)だが、それ以前は同世代の若松とリーでトップ2を占めていたわけだ。
これだけ実績、そして話題性のある選手がそろっていれば、キセキの世代と言っても過言ではないだろう。
ちなみにこの世代が高校3年時の夏の甲子園(1965年)は、巨人の原辰徳監督の実父・原貢氏が指揮を執った三池工(福岡)が初出場初優勝を飾った大会でもある。決勝では木樽擁する銚子商を破っている。
同年春の甲子園では3試合連続完封を記録した平松がエースだった岡山東商が、藤田を擁する市和歌山商に勝利し初優勝を飾った。レジェンドたちは高校時代から活躍していたのだ。
果たして今後、この世代を超えるようなレジェンド世代は誕生するのだろうか。田中将大(ヤンキース)、前田健太(ツインズ)らの1988年生まれ世代、大谷翔平(エンゼルス)、鈴木誠也(広島)らの1994年生まれ世代に注目だ。
文=勝田聡(かつた・さとし)