2016年の9勝に続き2017年は16勝とついにブレイクを果たした東浜巨(ソフトバンク)。2017年9月14日に公開された「菊池雄星(西武)と東浜巨(ソフトバンク)が挑む投手三冠王。かつてはこんな選手が達成していた!」という記事に、「東浜巨」というワードを通して辿りついた人が多かった。
記事が公開された直前の登板を見ると、9月8日のロッテ戦。序盤の大量援護に恵まれリーグトップの15勝目を挙げたものの、5回2/3を投げて、被安打9の4失点といまひとつの内容だった。
この日の勝利でソフトバンクのマジックは8。サファテが9月5日に樹立したシーズンセーブ記録を1つ伸ばす48セーブ目を挙げ、通算では藤川球児(阪神)にならぶ歴代5位の223セーブをマーク。東浜はこの時点で勝利数と勝率のリーグトップに立った。
菊池雄星(西武)とのタイトル三冠争いのなか、二冠を押さえた節目の試合の直後という理由もあるが、おそらくは「東浜がロッテに打たれたみたいだなぁ」と、不甲斐なさをチェックしたい検索心が、検索数の伸びを後押ししたのではないだろうか。もしかすると、「サファテ」「藤川球児」という強力なワードに引っ張られるように、ついでに検索されたのかもしれない。いずれにせよ、めでたい結果での検索ワード上昇でなかったことは残念……。
とはいえ、終わってみれば東浜は最多勝で初タイトル。シーズンを通して立派な成績を残した。安定した投球内容を見ると今季も主戦として活躍するはず。ソフトバンクのエースとなった東浜に、昨季同様の熱い視線が注がれることは間違いない。
8位には、お騒がせ助っ人としてプロ野球史に名を残すグリーンウェルがランクイン。2017年4月25日に公開された記事「神のお告げで引退のグリーンウェル(阪神)、2試合で5億円のヒルマン(巨人)ら、助っ人変人伝説!」がグリーンウェルと紐づいた。
ただ、このランキングデータは2017年9月以降のもの。突如、検索爆アゲワードとして浮上する約半年前に公開された上記の記事が、グリーンウェルの目覚めを誘発したわけではない。では、何故この時期にグリーンウェル……?
その答えは阪神の新外国人選手・ロサリオ。12月上旬、阪神がロサリオに「グリーンウェル超え」の2年9億円を提示したニュースが流れる。そこで若い野球ファンには「グリーンウェル……誰?」、オールドファンには「いたねぇ!」となったわけだ。
ちなみにグリーンウェルはメジャー通算打率.303という「バリバリのメジャーリーガー」の実績をひっさげて1997年に阪神にやってきた。年俸は阪神史上最高額の3億円超。阪神・暗黒時代を払拭する助っ人として期待されたのだが……。
蓋を開けてみると、グリーンウェルは春季キャンプ中に背中の痛みを訴えて一時帰国。5月8日に初出場となったが、5月11日に「神のお告げ」という謎の引退宣言を残して、阪神を去った。グリーンウェルのために阪神は超高級マンションを用意。甲子園球場の電光掲示板も「グ」「リ」「ー」「ン」「ウ」「ェ」「ル」の7文字が入るよう改修するなど、三顧の礼をもって迎えたが、散々な結果に終わってしまった。
グリーンウェルから2018年を紐解くのは難しいが、敢えてこじつけてみよう。近年の阪神はアタリの助っ人が多い。グリーンウェルに高い授業料を払って目利き力を上げたということ、か? ロサリオ入団で苦々しいグリーンウェルの名が浮上したのも何かの縁。ロサリオにはおおいに活躍してもらって、グリーンウェルも分も取り返したいところだ。
7位の「吉住晴斗」は納得のランクイン。
2017年のドラフトで最大のサプライズだったのが、ソフトバンク1位の吉住晴斗(鶴岡東高)だ。清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)、安田尚憲(履正社高→ロッテ)、馬場皐輔(仙台大→阪神)を次々と抽選で外し、4回目の1位指名で読み上げられた名前が吉住。その瞬間、「誰?」というクエスチョンマークが日本中の野球ファンにかけめぐった。
ソフトバンク1位だけにある程度、吉住についての情報は報道されたが、ここでもう1度、吉住についておさらい、いや、予習をしておこう。
吉住は高校1年秋に投手に本格転向した151キロ右腕。185センチ85キロという立派な体つきで伸びしろはたっぷり。高校2年夏には甲子園に出場し、1イニングを三者凡退に抑えた……が、多くの評価は下位での指名になるだろう、というものだった。12球団一の育成環境を誇るソフトバンクからは千賀滉大も球界を代表する投手に育った。じっくり鍛えて「誰?」という声をひっくり返す活躍を見せてほしい。
なお、「吉住晴斗」と検索した方が辿り着いたのは週刊野球太郎がドラフト候補を取り上げる「選手名鑑」コーナー。ドラフトに強い本誌『野球太郎No.025 2017ドラフト総決算号&2018大展望号』では、指名直後の吉住の貴重なインタビューが掲載されている。「吉住晴斗」を検索の窓に打ち込んだ方は、ぜひ本誌もチェックしてほしい!
文=山本貴政(やまもと・たかまさ)