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ソフトバンク・千賀滉大の快投で思い出す2008年の西武・岸孝之。プロ野球短期決戦ならではの投手起用

 「陰のMVP」と言うには、あまりにもインパクトの大きなピッチングだった。今季のパ・リーグCS(クライマックスシリーズ)ファイナルステージは、リーグ優勝を果たしたソフトバンクが3位からの下剋上を目指すロッテを相手にスイープ。王者の貫禄を見せ、2年連続日本シリーズ進出を決めた。シリーズMVPは3戦通して勝負強い打撃を披露した内川聖一に輝いたが、好リリーフでピンチの芽をことごとく摘んだ千賀滉大の活躍も見逃せない。


「ゴールデンイヤー」の夢を完膚なきまでに砕いた千賀のピッチング


 千賀といえば、150キロ超の快速球と「お化け」と称されるほど落差の大きなフォークが大きな武器。しかし右肩痛の影響もあり、51試合に登板した一昨年を除くとコンスタントに活躍することができなかった。捲土重来を期した今季は2軍で好成績を残し、夏場からは強力な先発陣の一員へ。8月18日のオリックス戦では約1年3カ月ぶりの白星をマークした。

 迎えたクライマックスシリーズ。背番号41はいざという時の切り札としてブルペンに待機していたが、すぐに出番がやってくる。第1戦、2-2の同点、5回表1死満塁で先発・武田翔太を引き継ぐと、デスパイネ、クルーズの両外国人を連続三振に斬って取り、ピンチを脱出。さらに第3戦でも、一発が出れば逆転のピンチで見事な火消し。力勝負で追い込み、決め球はフォークの投球スタイルは健在だった。

 相手のロッテは2005、2010年の5年周期で日本一に輝き、ファンの間では今季を「ゴールデンイヤー」と謳っていたが、千賀のピッチングになすすべなく力負け。先発の後にこのような投手が出てくるソフトバンクの選手層に脱帽するしかなかったようだ。

千賀の勇姿に2008年の岸をダブらせる


 千賀の投球を見て、ある年のある投手のことを思い出した。それは2008年の岸孝之。この年の西武を頂点に導いた岸は、巨人との日本シリーズで先発だけでなく救援でもフル回転。見事、日本一の立役者となった。

 岸は第4戦で先発し4安打完封、毎回奪三振の完璧な内容でチームを2勝2敗のタイに戻すと、相手に王手をかけられた第6戦では4回途中から2番手として登板。1死一、三塁のピンチで坂本勇人、鶴岡一成を抑えると波に乗り、そのまま9回まで投げ切るロングリリーフを見せ逆王手に導く。この投球で勢いに乗った西武は翌日の第7戦も勝ち、4年ぶりの日本一に。岸はシリーズMVPを受賞した。

 この時の岸と今回の千賀の共通点を探すと、快速球を武器にしているのはもちろん、打者のバットに容易に当てさせない伝家の宝刀を持つ。岸にはドロップのような落差の大きなカーブがあり、千賀には上述の通りフォークがある。そして、このようなスクランブルな起用法をした渡辺久信、工藤公康の両監督は、奇しくも黄金期の西武でエースの座を争った間柄だ。短期決戦を勝ち抜くにあたり、柔軟な発想を持っているのだろう。

 果たして24日から始まる日本シリーズでの千賀の起用法は、どのような形になるのか。クライマックスシリーズと同様に救援に専念するのか、それとも2008年の岸のごとく先発からブルペン待機となるのか。工藤監督のベンチワークはひとつの注目ポイントだ。


文=加賀一輝(かが・いっき)

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