昨季、セットアッパーとして50試合に登板し、防御率2.53とまずますの成績を残しながら、今季はまったく出番がなく引退となってしまった安藤優也(阪神)。39歳という年齢的な要因も大きかったとはいえ、あらためて明日をも知れないプロ野球選手の現実を目の当たりにした。
このように、ベテランになればなるほど、1年1年が勝負となってくる。今回はまさに野球人生の崖っぷちに立つ投手をピックアップ。崖っぷち選手として名前を出すのは心苦しい限りだが、復活へのエールととらえていただければ幸いだ。
ソフトバンクのエースとして確固たる地位を築き、巨人にFA移籍した2012年からも3年連続2ケタ勝利を挙げるなど、なんだかんだ言われながらも最低限の成績は残してきた杉内俊哉。しかし、2015年7月に股関節痛で2軍落ちして手術に踏み切って以降、2016年、2017年と1軍登板なしに終わっている。今季は、左肩痛も発症したようで、さらに復帰に時間を要している。
球団は、来季も契約を結ぶ方向のようだが、3年連続で2軍暮らしとなると、10月30日で37歳となる年齢から見ても、取り巻く状況は厳しいものとなる。ゆったりとしたフォームから鋭いボールを投げ込む独特のスタイルで現役最多の2156奪三振(歴代14位)を誇る杉内。その勇姿をまた見たいと願うファンは多いはずだ。なんとか期待に応えたい。
2011年は18勝、2012年は15勝で2年連続最多勝のタイトルを獲得している内海哲也(巨人)。2012年には日本シリーズでも2勝を挙げ、日本一に大きく貢献した。
そんな内海も、2013年から4年という長期契約を結んだことで安心したわけではないだろうが、成績が下降。2013年こそ13勝を挙げたものの、前2年は(統一球を使用していた背景もあるが)1点台だった防御率が3.31と悪化し、そこから2014年は7勝9敗、2015年は2勝1敗とさらに低空飛行が続く。2016年こそ9勝6敗と多少持ち直すも、今季は2勝7敗で防御率も5.77。残念な結果に終わった。
フィールディングやクイックのうまさなど、投手としてのセンスは現役随一の内海。ただ、全盛期の球威がないため、変化球も生きず、攻めのピッチングがなかなかできていないのが現状だ。
これ以上の成績悪化となれば、来年4月には36歳となる年齢からも、厳しい現実を突きつけられる可能性は否めない。というより、チームに多大な貢献をした過去があるからこそ、周囲もボロボロになるまでの現役生活を勧めない可能性もある。
ほかにも、現役最多の156勝(歴代48位)を挙げながらも今季は4勝14敗と大きく負け越した石川雅規、右ヒジに何度もメスを入れ、そのたびに蘇ってきた館山昌平(ともにヤクルト)、苦しい時代の広島を先発、リリーフの両面で支えた永川勝浩も来季の結果次第では厳しい事態を迎えるかもしれない……。
パ・リ―グの崖っぷち投手では、やはり松坂大輔(ソフトバンク)に触れないわけにはいかない。言わずと知れた甲子園のヒーローで、高校卒業直後から西武、メジャーで派手な活躍を続けてきた。
しかし、2015年からの3年契約で入団したソフトバンクでは、2016年10月2日の1試合に登板したのみ。手術した肩の不調が癒えず、ファームでもほとんど投げられていないのが現状だ。来季も現役続行の可能性が高そうだが、マウンドに立てないようなら、さすがにもう潮時かもしれない。
松坂と同じく甲子園を沸かせた斎藤佑樹(日本ハム)も、来季の動向次第では、さらなる崖っぷちに追い込まれてしまうかもしれない。
早稲田実から早稲田大を経てプロ入りし、今季が7年目。キャリアハイは、19試合に登板し6勝6敗、防御率2.69だったルーキーイヤー。その後は、肩の故障もあってシーズンを通して投げることはほぼ果たせていない。
高校、大学時代にあれだけのフィーバーを巻き起こし、まさに鳴り物入りでのドラ1入団だっただけに、ここ数年のパフォーマンスに対するファンの落胆は大きいが、何より不甲斐なさを感じているのは斎藤本人だろう。持っている男の巻き返しはなるか。
ほかにパ・リーグの投手では、ここ2年間、それぞれ7試合の登板で2勝、0勝に終わっている2012年の沢村賞投手・攝津正、過去に2ケタ勝利を2度挙げながら、2016年、2017年と1試合ずつしか投げられていない大隣憲司(ともにソフトバンク)らも、もうひと花を期待したいところだが……。
文=藤山剣(ふじやま・けん)