清宮幸太郎(早稲田実)を筆頭に、好選手・好チームが揃った今年のセンバツのゴングが、いよいよ鳴り響こうとしている。
そんな今年のセンバツで筆者がイチオシするのは、東北代表の盛岡大付。昨夏の甲子園では、打っても打っても止まらない「わんこそば打線」で暴れまわり、3試合で28得点。大会を盛り上げたチームが、2季連続で聖地にやってくる。
新チームになってからは計算できる投手が増え、打撃のチームにアクセントを加えているようだが、タイプの異なるスタイルで2季連続出場をつかんだ事実も興味深い。では、ここからイチオシの理由に触れていこう。
昨夏の甲子園で自慢の猛打が大爆発した盛岡大付。3試合で28得点を挙げたが、一方で自軍の投手も打ち込まれ、3試合で25点を献上していた。
「打たれたら打ち返す」という姿勢に真っ向勝負の潔さを感じるものの、もう少し投手陣が踏ん張っていたら……という思いも頭を過ぎる。そんな筆者の贅沢な気持ちが届いたのか、新チームでは好投手が続々と頭角を現してきた。
まず、エース候補は昨夏の甲子園の3試合にすべて2番手で登板した三浦瑞樹(3年生)。昨夏は2失点、4失点、6失点と登板するごとに打ち込まれてしまったが、勝ち上がるほどに相手も強くなるのだから仕方がないこと。今春は、灼熱の聖地で積んだ経験を生かし、ひと冬超えた成長ぶりを見せてくれるだろう。
三浦に続くのは、同じく3年生の平松竜也。体調の問題により、秋の岩手県大会であまり投げられなかった三浦に代わって1番手を務めた。すると責任感を力に変えて、岩手県大会の準決勝でライバル・花巻東を9回途中2失点に抑える好投。「三浦に続く」と先述したが、「三浦に並ぶエース候補」と言っても差し支えない。
また外野手兼任だが、140キロオーバーのストレートを投げ込む臼井春貴(3年生)もスタンバイしている。
ほかにもベンチ入りのボーダー上だが、2014年にソフトバンクからドラフト1位で指名された松本裕樹(盛岡大付)の弟・跳馬(2年)も注目株。このように次々と好投手が現れているので、ぜひ今センバツではチャンスを生かして、上位進出の原動力となってほしい。
打線に関しては、昨夏の甲子園で2年生ながら全試合に3番・中堅手として出場した植田拓がイチオシだ。
身長165センチながら、高校通算36本塁打。そのなかには聖地で高田萌生(創志学園/現・巨人)から放った一発も含まれており、大物食いのイメージが強い。今大会でも好投手をとらえるか。
また50メートルを5秒90で駆け抜けるスピードも武器で、チームのリードオフマン役も担うことも可能。そのため、1回でも多く打席が回る1番に据えるのか、それともクリーンアップでランナーを還す役割を担うのか、関口清治監督の起用法も大いに見ものだ。
昨秋、植田を抑えてチーム最多盗塁を記録した大里昂生の足も見どころ(大里は9盗塁。植田は8盗塁)。また植田に次ぐチーム2位の打点を挙げた比嘉賢伸が、額面通りの打棒を発揮できるかも、チーム躍進のカギを握る(比嘉は32打点。植田は42打点)。
個の力を超えチーム力で植田を盛り立てられれば、今春の打線は「ネオわんこそば打線」に進化を遂げるだろう。
近年の岩手勢のセンバツの戦績を見てみると、菊池雄星(現・西武)を擁した花巻東が2009年に準優勝している。
その後は、2010年の盛岡大付、2012年の花巻東が連続して1回戦で散ったが、2013年の盛岡大付、2016年の釜石と続けて初戦突破。徐々に上位進出への機運が高まってきたともいえる。
昨秋の東北大会での盛岡大付は、決勝で仙台育英(宮城)に負けて準優勝に終わった。センバツではその悔しさを晴らすべく、「準」のない最高の結果を目指してほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)