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嬉しい誤算から、期待に背いた球団も! こんなハズじゃなかった2016年プロ野球【セ・リーグ編】

 3月27日の開幕から1カ月以上が経過。スタートダッシュに成功したチームもあれば、反対に失敗したチームもある。それは選手にも同じことがいえる。

 野球太郎では「こんなはずじゃなかった!」と、誤算に感じたチーム・選手について振り返る特集を2週に渡りお伝えしよう。1週目はセ・リーグ編。(成績は5月1日現在)

ビシエド旋風の理由は対応力にあり!



 最初は「嬉しい誤算」から。いまや、この男の名を知らない野球ファンはいないはずだ。今季、中日に加入したダヤン・ビシエドである。

 メジャー通算66発の実績を引っさげ来日した大砲は、開幕から4番・一塁の座をがっちりとキープ。打率・本塁打・打点の3部門でいずれもリーグ上位に食い込む活躍を見せ、3・4月の月間MVPの有力候補に躍り出ている。

 このように書くと実力をそのまま発揮しているように見えるが、開幕前は不安がないわけではなかった。元々メジャー時代を知っている人間からすれば、ビシエドは「粗さの目立つフリースインガー」。当たるとデカいが、ボール球にも手を出してしまう“ダメ外人”の典型だった。

 それを払拭したと確信をした試合がある。3月27日の阪神との開幕3戦目。日本球界復帰を果たした藤川球児の凱旋ゲームで、背番号66の対応力を見た。

 第1打席に死球をもらった後、第2打席は反撃の号砲となる一発をバックスクリーンへ。史上初の新助っ人による開幕3試合連発を見舞うと、次の打席では4点ビハインドを追いつく2点タイムリーをマーク。藤川の凱旋勝利を消したあと、続く第4打席でも歳内宏明からレフトへ安打を放った。

 その内容が秀逸で、第2打席は藤川がゲーム中にほんの数球しか投げていなかったカーブをとらえての一発(しかも初球)。第3打席は高めの釣り球とフォークのコンビネーションをカットしながら粘り、最後はインハイのストレートをライト前へしぶとく落とす同点打。第4打席は業を煮やした阪神バッテリーが全球フォークの徹底ぶりを見せたが、それをあざ笑うかのように対応した。

 ストレートだけでなく、変化球(特にタテ変化の系統)にも強いところ。そしてパワーだけでなく、対応力にも優れているところ。これがビシエドの活躍の源泉だ。

今永昇太、実力を発揮するもいまだ0勝…



 高山俊(阪神)や原樹理(ヤクルト)など、今季も多くのルーキーが開幕から名を連ねる。中でも今永昇太(DeNA)は、早くもチームに欠かせないスターターとなっている。

 左腕から繰り出すキレのあるストレート、変化量の大きいスライダーに、よく抜けたチェンジアップ。ほぼこの3球種でピッチングを組み立て、一つひとつの完成度が高い。

 43奪三振(リーグ2位)、防御率2.45(同5位)、与えた四球は4個のみ(同2位)。新人離れした抜群のクオリティーを見せており、ドラフト1位の実力は本物のようだ。

 ただ、これだけの結果を残しながらも0勝4敗。勝ち負けが逆になってもおかしくないのに、黒星が先行しているのはなぜか。

 理由として考えられるのは「打線の援護に恵まれない」こと、そして厳しいようだが「粘り切れていない」ことだ。

 打線の援護に関しては33イニングでわずか2得点。これにはアレックス・ラミレス監督も「どうしても援護ができない」と嘆き節。92得点はリーグ最少だが、特にルーキーに対してはバットが湿ってしまう模様だ。相手打線を寄せつけない投球をする今永のリズムに、味方すら飲み込まれているのだろうか。

 粘り切れていないことに関しては自身も認めており、14奪三振を記録しながら勝てなかった4月29日の阪神戦では、陽川尚将に痛恨の逆転2ランを被弾。珍しく(!?)1点リードをもらいながらも、フイにしてしまった。「援護点がないというのは防御率0点台の投手が言うこと」と言い訳をしない姿勢は好感が持てるだけに、今のピッチングを続けていけば白星は必ず転がってくるはずだ。


文=加賀一輝(かが・いっき)

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