2019年のペナントレースも開幕してから2カ月ほどが経過した。チーム、そして選手の好不調も多く見られている。開幕直後は最下位に沈んだ広島が5月に入り逆襲。5月半ばには首位を奪取した。
その広島は開幕から5カード連続の負け越しでスタートした。プロ野球の歴史を紐解くと開幕から5カード連続で負け越したチームの優勝確率はなんと0パーセント。そんな苦境とジンクスを乗り越えつつある。
このようにプロ野球界には多くの法則がある。今回はDeNA・ラミレス監督の起用法とヤクルトの社会人選手にまつわる法則を見ていきたい。
長いシーズンを戦う上で、選手には多かれ少なかれ必ず好不調の波が訪れる。そのときに我慢して起用できるか、もしくはできないかは大きな分かれ目となる。
近年では栗山英樹監督が執ったレアード(現・ロッテ)の初年度の起用法が有名な話だ。打率が上がらず、本塁打も出なかったレアードを使い続け、結果的に後半戦の大爆発へと導いた。
栗山監督の例のように監督が選手を信じ続けることで結果に結びつくことは珍しいことではない。なかでもラミレス監督には「我慢に成功例」が多い。2016年が象徴的だ。桑原将志、ロペスがシーズン中に大不振。しかし、スタメンを外すことなく、起用を続けることで後半戦に結果を残した。
とくにロペスの起用に関しては語り草にもなっている。30打席連続無安打となった後に、打順を5番から3番に「昇格」させた。するとそれが見事に的中。その日に3安打猛打賞を記録し不調を脱したのである。
今シーズンも開幕から不振の続いていた宮崎敏郎をスタメンから外すことなく、起用し続けてきた。4月末の時点で打率.165だったが、我慢したおかげで5月に入ると急上昇。5月12日から8試合連続安打を記録いしている。打率も.250付近まで戻してきた。
このようにラミレス監督の我慢が結果的に実ったのである。シーズンはまだ100試合近く残っている。これからもDeNAで不振に陥る選手は出てくるだろう。それでもラミレス監督が起用を続けたならば、復調する可能性が高い。そんな気がする。この我慢を低迷するチームの浮上につなげたい。
今シーズンのヤクルトは村上宗隆の躍進が目覚ましい。19歳にして2ケタ本塁打をすでに達成。セ・リーグ本塁打王、打点王争いの上位争いに名を連ねているのである。逆方向への本塁打も多く、広角に打てるパワーと技術は素晴らしいものがある。
村上は清宮幸太郎(日本ハム)と同じく、2017年のドラフトで指名された高卒組だ。近年のヤクルト野手陣を見ると、高卒入団組がしっかりと育っている。現在の主力を見ると、山田哲人、雄平、中村悠平らがきっちりと結果を残している。また、2015年のリーグ優勝時に主軸だった川端慎吾、畠山和洋もともに高卒でユニフォームを着た生え抜き組である。
大卒組も同じように活躍している。5月22日の試合でNPB史上最速で1500本安打を記録した青木宣親。昨シーズン、遊撃のレギュラーをつかんだ西浦直亨、代打の切り札である荒木貴裕らがその代表的な存在だ。
一方で元気がないのが社会人出身組である。投手では石山泰稚や秋吉亮(現日本ハム)らが大きな実績を残している。しかし、野手で近年結果を残したのは藤井亮太、比屋根渉(現大和高田クラブ)が多少目立つ程度。なかなかレギュラーに定着できていない。
今シーズンも塩見泰隆がオープン戦で結果を残し期待されたが、ここまでは1軍での実績を上げられていない。また2017年にブレイクしかけた藤井も昨シーズン以降結果がついてこない。
もちろんチームの歴史上、社会人出身で活躍した野手が不在というわけではない。宮本慎也(現ヘッドコーチ)、若松勉、古田敦也といったレジェンドは社会人出身である。
果たして塩見や藤井らは近年うまくいっていない「社会人出身野手」のジンクスを覆し、1軍定着、そしてレギュラー奪取となるだろうか。
■ヤクルトの現役社会人出身野手
(※生え抜きのみ、独立リーグ出身は除く)
藤井亮太(シティライト岡山)
塩見泰隆(JX-ENEOS)
松本直樹(西濃運輸)
吉田大成(明治安田生命)
(成績は5月23日現在)
文=勝田聡(かつた・さとし)