阪神タイガースの新監督に、金本知憲氏が就任。新監督誕生を受けて、坂井信也球団オーナーは、次のような発言をした。
「再建するというか、潰してしまって新しく作るというか……」
坂井オーナーの発言は、過去のものを捨て去り、新しいものを再構築する「スクラップ&ビルド」宣言と受け取ることができる。
2005年のリーグ優勝から、遠ざかること10年。昨季に続いて今季も9月に失速するなど、阪神の勝負弱さはパターン化。期待を裏切り続けるチームの大変革を願うファンも多い。
フロントと現場が一枚岩になって、優勝を目指すチームは強い。そして筆者は、球団GMと監督、ヘッドコーチの3つを頂点にしたトライアングルがしっかりと形成されてこそ、強いチームが生まれると考えている。
球団GMは、フロントとの調整役も兼ねている。金本新監督にその役目を負わせるのは酷であり、監督はやはり試合に集中すべきだ。さらにはその監督を支える有能なヘッドコーチがいれば、監督1年目の采配経験の浅さをカバーすることができるだろう。
今季を振り返れば、このトライアングルが決壊したチームは、ことごとく下位に沈んでいる。
セ・リーグ5位の中日は、落合博満GMが突出した印象を受けた。森繁和ヘッドコーチや、谷繁元信選手兼監督が、それぞれの立場で機能していたとは言い難く、トライアングルのバランスを崩していた。
またパ・リーグ最下位に沈んだ楽天も、オーナーの現場介入が噂されて田代富雄打撃コーチがシーズン途中で退団。フロントと現場の関係が上手くいっていたかどうかは微妙で、大久保博元監督は、わずか1年でチームを去った。
あくまでも個人的見解ではあるが、阪神の変革には、岡田彰布GM、金本知憲新監督、高代延博ヘッドコーチのトライアングルがベストだと感じている。
岡田氏は早稲田大OBのネットワークを持ち、全国に広がる野球人脈に加え、「岡田会」を基盤にした財界とのパイプも太い。そして過去に阪神の監督を務めて結果も出したことで、フロントに意見が言える立場でもある。なんといっても、金本新監督が絶対的な信頼を置いている人物だ。
また、高代コーチの守備走塁における高度な戦法は、金本監督も現役時代から心酔している。このトライアングルが完成すれば、阪神の変革は一気に加速するのではないだろうか。
あとは坂井オーナーが、「スクラップ&ビルド」を、本当に実行することができるか。球団の姿勢に注目したい。
文=まろ麻呂
子供のころから愛してやまない野球を、企業コンサルタントに携わった経験を活かして鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。