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第1回「シリーズ男」名鑑(打者編)

 今週よりスタートした『週刊野球太郎』。このコーナー「野球なんでも名鑑」は、これまで活躍してきた全てのプロ野球選手、アマチュア選手たちを、さまざまな切り口のテーマで分類し、テーマごとの名鑑をつくる企画です。
 これから毎週、各種記録やプレースタイル、記憶に残る活躍や、驚くべく逸話……などなど、さまざまな“くくり”で選手をピックアップしていきたいと思います。記念すべき第1回のテーマは、こちら!!!

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 ペナントレース終了後、“ポストシーズン”に大活躍する選手がいます。
元祖は、メジャーリーグ1977年、78年のワールドシリーズなどで大活躍し、ヤンキースを世界一に導いたレジー・ジャクソン外野手。その10月の活躍から“ミスター・オクトーバー”と呼ばれるようになったことは有名です。
 この称号、日本で言うところの要は“シリーズ男“。10月に入り、日本のプロ野球にもクライマックスシリーズや日本シリーズが迫ってきた今回は、“シリーズ男“と呼ぶに相応しい野手(80年代以降)を選んでみました。以下、ご覧ください。

秋山幸二(西武・ダイエー)

 春先にホームランを量産する印象が強いが、日本シリーズでも活躍。特に90年代初頭は存在感を見せた。90年(対巨人)に1本、91年(対広島)に4本、92年(対ヤクルト)に1本と3年で6本のホームランを放ち、いずれの年もチームの日本一に貢献。91年はシリーズMVPにも選ばれた。記録とは関係ないが、86年(対広島)、90年、91年のシリーズで見せた3度のバック宙ホームイン、このあまりにも派手なパフォーマンスは90年代ライオンズ黄金時代を象徴するひとつのシーンとして、今もファンの目に焼きついている。そして、さらに99年には移籍先のダイエーで、チームが初めて日本一となるシリーズでもMVPを獲得している。まさに“シリーズ男”の最高峰といってよいだろう。

[秋山幸二・チャート解説]

西武の黄金時代を支え、ダイエーでは主将を務めており、貢献度は最高評価の5。バック宙ホームインは伝説級。物語度も4。シリーズでの活躍の中心となった時代は秋山の全盛期。ペナントレースでも好成績を残しており、シリーズで豹変した印象は少し弱い。豹変度は3。

※チャートは、“シリーズ男”に必要な3つ要素、シリーズでのチームの勝利にどれだけ寄与したかの「貢献度」、記憶に残るパフォーマンスを見せたか、エピソードを残したかの「物語度」、シリーズという舞台に適応し特別な活躍を見せたかの「豹変度」について、それぞれ5段階評価しました。(以下同)

今江敏晃(ロッテ)

 2005年(対阪神)、2010年(対中日)のシリーズで計42打席に立ち打率.524という高打率を残した活躍はまさに神がかっていた。2005年には8打席連続ヒット、シリーズ最高打率.667などの記録も残している。ホームランは1本と少なくインパクトにはかけるものの、複数回出場した日本シリーズにおいて100%の確率でシリーズMVPを獲得しているのはこれまで今江だけ。もし、もう一度シリーズに出場し大爆発すれば、レジェンドとして球史に名を残す可能性は大。彼もまた“シリーズ男”に相応しい過去を持っている。

[今江敏晃・チャート解説]

活躍したシリーズはともに日本一に輝いており、貢献は大きい。が、2005年は下位打線を打つこともあったので貢献度は4。大活躍は見せたが、記録以上に記憶に残るエピソードには恵まれず。物語度は3。シリーズで残した高打率はどう考えても規格外。豹変度は5。

和田一浩(西武・中日)

 2002年の日本シリーズ(対巨人)では5番を打ちながら15打数ノーヒットと絶不調に陥り4連敗の戦犯に。だが2004年(対中日)には4本のホームランを放ち汚名返上。この豹変ぶりが、より“シリーズ男”の物語性を醸し出している。中日移籍後の2010年はクライマックスシリーズ(対巨人)でサヨナラ打、日本シリーズ(対ロッテ)でも7試合で12安打1本塁打と気を吐いた。成績を落とした2011年(対ソフトバンク)もシリーズでは最低限の役割を果たした。浮き沈みは激しいがシリーズに出ればインパクトを残す選手のひとりだ。

[和田一浩・チャート解説]

02年、10年とシリーズ敗退経験があり、優勝した年も優秀な投手陣の力が存在。貢献度は3。ブレーキからシリーズ男へ。プレッシャーの中自力で評価をひっくり返した。物語度は4。ブレーキからシリーズ男への豹変はあるが、シリーズで突如爆発という印象は弱い。豹変度は3。

その他印象に残った“シリーズ男”たち

大田卓司(西武)

 1982年(対巨人)、83年(対中日)のシリーズで13試合22安打3HR。“仕事人”として短期決戦でもしっかり仕事をした。通算打率.341は80打数以上だと歴代6位。

長嶋清幸(広島)

 阪急と戦った1984年のシリーズ7試合で9安打。阪急のエース・山田久志からの逆転弾含む3本のホームランを打ちMVPに輝いた。86年(対西武)でも2HR。

駒田徳広(巨人・横浜)

 1989年(対近鉄)の0勝3敗からの逆転日本一に12安打して貢献。第7戦で、「巨人はロッテより弱い」発言の加藤哲郎から一発。98年にはベテランとして横浜(現DeNA)を38年ぶりの日本一に導く。

デストラーデ(西武)

1990、91、92年と3年続けて日本シリーズの第1戦第1打席に本塁打という変わった記録で強いインパクトを残した。シリーズには3度出場し7HR。

飯田哲也(ヤクルト)

1992、93年の王者・西武とのシリーズで存在感。14試合で19安打、さらには8四球を選び西武の投手陣にプレッシャーをかけた。両年とも優秀選手に選出。

古田敦也(ヤクルト)

計5度のシリーズ出場。97(対西武)、01年(対近鉄)はそれぞれ6安打、7安打(ともに5試合)ながらリード面なども評価されMVPに輝いた。

稲葉篤紀(ヤクルト・日本ハム)

1997年には10安打、優秀選手に。01年は活躍できなかったが日ハム移籍後の2006年(対中日)は2HR7打点でMVP。翌07年は5試合で1安打と封じられた。

大塚光二(西武)

控えとしてシリーズを迎えることが多かったが、通算58打数23安打.397と高打率を残す。98年(対横浜)には6打席連続安打も記録した。

城島健司(ダイエー)

99年に1本、2000年に4本、03年には4本とホームランを量産。4HRはシリーズ最多タイで、それを2度記録しているのは長嶋茂雄と城島のみ。

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 こうして見てくると“シリーズ男”になるには、まずは圧倒的な活躍で優勝に貢献することは第一条件ですが、さらにはそのシリーズで起こるドラマに一枚噛むことが大事。物語のおもしろさはストーリーの起伏で決まります。場合によっては、自らの不振をドラマの前フリにしてしまってもいいわけです
 もうひとつ大事なのが、秋山幸二のバック宙や、駒田徳広の加藤哲郎からの一発後「バーカ」発言のようなスタンドプレー。毎年絶えることなく、勝者とその立役者が生まれ続けるプロ野球において「シリーズ男」の称号を得るには、「ただ活躍しただけ」ではなく、強烈な個性を発揮して物語のキャラクターとして突出することが必要です。これらの条件が揃ったとき“シリズ男”の風格が備わってくるといってよいでしょう。

 今回拾い出した現役選手の中では、終盤調子を上げてきている中日の和田一浩、日本シリーズに出ると「好調→ブレーキ→好調→ブレーキ」を繰り返す日本ハムの稲葉篤紀らがポストシーズンに進むチャンスを残しています。彼ら元“シリーズ男”の打棒にぜひ注目してみてください。そしてまた、新たな“シリーズ男”の出現をわくわくしながら待ちましょう!
文=秋山健太郎(スポーツライター)
イラスト=アカハナドラゴン

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