ドラフト会議が終わったのも束の間、2013年の日本シリーズは10月26日(土)に開幕した。勝てばV9以来、40年ぶりの連続日本一を達成する巨人。逆に楽天が制すれば、球団創設初の日本一を手にすることになる。どちらにしても、日本プロ野球史に歴史が刻まれる今年の日本シリーズは、熱戦が続いている。
CS争いに続いて、日本シリーズも速報していくこのコーナー。試合経過や結果の振り返りを重視する他メディアに対して『週刊野球太郎』はシリーズ中に出た監督や選手、関係者たちのコメントを拾い集めて、今シリーズを解説していこうと思う。それでは早速、試合前日の監督会議の模様からお伝えしよう。
開幕前:監督会議編
楽天・星野仙一監督「シーズン中、いつもやってるアレ、予告はどうする?」
かつては阪神と巨人に別れてセ・リーグでシノギを削った両監督が、いきなり舌戦を展開した。シリーズ前日の監督会議の終了間際、星野監督が放ったコメントがこれだ。もはや恒例行事となりつつある「予告先発について」のやりとり。「またかよ…」といった向きもあるが、これはこれでプロレス的要素を含んだ、試合前の舌戦として幾多の名言を生んできた。
例えば2004年の中日vs西武では、西武側が予告先発を要求するも、中日・落合博満監督が「野球規則には予告先発のルールはない」と、断固拒否。翌2005年のロッテvs阪神ではロッテ・バレンタイン監督が挑発行為ともとれる予告先発を要求するも阪神・岡田彰布監督は「ええことよ」と受けて立ち、この年限定のルールとなった。さらに2008年の巨人vs西武では「予告先発は要望があればお受けします」と提案した巨人側に対して「ナシでお願いします」と西武・渡辺久信監督は冷静に拒否した。 ※監督は全て当時
今年の日本シリーズは、冒頭の星野監督のコメントに対し、巨人・原監督は「こちらは構いません」と即答。星野監督は「うちは(先発投手の)バリエーションが少ないから構わん」と切り返した。同席したNPBサイドから両チームの開幕投手を尋ねられると「それではジャイアンツから。内海(哲也)でいきます」と言い切った原監督に対し「則本(昂大)でいきます」と答えた星野監督。いよいよ、決戦の火蓋が切って落とされた。
第1戦:楽天0-2巨人
巨人・村田修一「去年は初めてで緊張した。でも今年は落ち着いている」
第1戦はその村田が1点リードの8回、貴重な追加点となる本塁打を放って試合を決めた。好投をみせていた則本昂大に対して「二死だったので、長打が打てるボールを積極的に振っていこうと思っていた。次の1点が欲しいところで打てて良かった」とコメントした村田。
実は、昨年の日本シリーズでは22打数4安打で.182とチームは日本一になったが、村田自身は絶不調だった。巨人の4番を担い、8月に月間最多安打記録を打ち立てるなどチームを引っ張ってきただけに、今シリーズでブレーキしてしまうと“逆シリーズ男”と、ありがたくないニックネームをつけられる可能性があった。
シリーズ前日には「スーパーサイヤ人になってやるしかない」とも話した村田。この1本で自信を取り戻したに違いない。村田にとっても、巨人にとっても大きな本塁打となった。
敗れた楽天だったが、日本シリーズ初戦でルーキーが先発するのはなんと61年ぶりで、勝利すれば史上初だった則本は8回10奪三振と好投を見せた。「(則本は)立派なもんだ。しかし、田中将大でも0(ゼロ)では勝てん」とコメントした星野監督。その田中に楽天打線は援護点を取れることができるのか? 試合後に発表された第二戦の予告先発は楽天・田中将大vs巨人・菅野智之と告げられた。
第2戦:楽天2-1巨人
楽天・田中将大「完封したかったです」
この男は本物の「神」になったのか。申し訳ないが“すごい”という形容詞しか見つからない。それほどの投球をみせてくれた田中が、ヒーローインタビューで言い放ったのがこのコメント。巨人打線から毎回の12奪三振を奪い、127球で被安打3、1失点に抑えて完投勝ちを収めた田中。これで今季はレギュラーシーズンを含め26連勝で、昨年からの連勝も30に伸ばした。そして、なんと言っても東北楽天ゴールデンイーグルスに日本シリーズ初勝利をもたらしたのが神様・仏様・田中様だった。
リードした嶋基宏は「すごいピッチャー。いつも以上に気合が入っていた」と最大級の讃辞を送り、7回2死一、三塁からセカンドへの詰まった当たりで一塁にヘッドスライディングして追加点をもぎ取った藤田一也は「タイミングはどうかと思ったけど(一塁塁審を)見たらセーフだった」とコメント。チーム全体で田中の好投を盛り立てた。この微妙な判定があってもなくても、田中に白星がついたのでは…と感じさせるほど、楽天は総力を挙げて、勝利した。
その打線のほうで特筆すべきは銀次だ。「攻める気持ちを忘れずに前を向く」とシーズン通りの積極的な姿勢で1戦目から気持ちを切り替え、4回に迎えたシリーズ通算7打席目で、待望の安打を放った。続く打席ではタイムリーを放ち、楽天史上初めて日本シリーズで打点をあげた。今シーズン後半まで首位打者争いをするなど大きく飛躍し、楽天をバットで引っ張った銀次も“逆シリーズ男”になる可能性があったが、この1本でもぎ取った1勝により呪縛から逃れられるか? 3戦目以降にも期待を抱かせる活躍をみせてくれた。
一方、この試合では満塁のチャンスで三振におわるなど完全にブレーキとなった巨人・ロペスは「(田中は)いい投手」と脱帽。いまだ日本シリーズ無安打。小学生時代には捕手・田中将大と投手としてバッテリーを組んでいた坂本勇人は、2三振を含む4打数無安打。「なかなか甘い球がこない」とこちらも敗北宣言し、景気の良いコメントは出なかった。
「2点目が入ったもんだから、ねっ。ちょっと気が抜けたというか」と8回、巨人の伏兵・寺内崇幸に1発を浴びた田中に対してチクリと皮肉を言った星野監督。個人的には「余計なことは言わない方が…」と思うが、続けて「東京ドームではおそらく、打線が爆発してくれるでしょう」とコメント。逆にいえば、田中での1勝は計算のうちに入っており、星野監督は「この日の1勝で浮かれるな!」と、勝って兜の緒をしめることを忘れなかったといえるかもしれない。
これで日本シリーズの対戦成績を1勝1敗のタイとした。移動日を挟み、第3戦は29日(火)に巨人の本拠地・東京ドームで行われる。
■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。”ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite。