まず投手では、対戦した4人の打者をすべて三振に切って猛烈にアピールした柿田裕太(元DeNA)に注目。
2013年のドラフト1位ながら、1度も1軍で登板せずに戦力外通告を受けた男が意地を見せた。まだ25歳と若いので契約を検討するチームがあるのではないだろうか。
ほかには1安打こそ打たれたものの、残る3人の打者を空振り三振に切って取った乾真大(元巨人ほか)も気になる。
日本ハムと巨人での7年に渡るプロ生活で大きな故障歴のないドラフト3位左腕は、参加メンバー最速の147キロを投じていた。中継ぎとして、まだ貢献できそうだ。
また、急遽参加を決めた大隣憲司(元ソフトバンク)は、4人の打者に対し被安打1、2奪三振という結果。本人は「今持っている100パーセントの力が出せた」と納得している様子。あとは天命を待つだけだ。
野手の注目株筆頭は、4打席で3打数3安打、1本塁打、1四球と爆発した榎本葵(元ヤクルトほか)。昨季は楽天から、そして今季はヤクルトから戦力外を通告されたが、そのうっぷんを晴らすかのようにダイヤモンドを駆け巡った。
年齢的には柿田と同じ25歳なので、まだまだやれるはず。次の球団で3度目の正直となるか。
先に注目投手として挙げた乾と大隣から安打を放った山崎憲晴(元DeNA)も見限れない。
2013年、2014年には100試合以上に出場しながら、故障と若手の台頭に見舞われ、今季を最後にDeNAのユニフォームを脱ぐことになった。しかし、捕手を含めて内野ならどこでも守れる守備能力は魅力だ
今年の12月で31歳になるが、1人で何役もこなせるユーティリティープレーヤーだけに、ベンチに置いておきたくなる人材だろう。
例年、2回開催される合同トライアウト。今年は1度きりということで、狭き門がさらに狭くなったが、それでも結果を出さなければならない。
今回取り上げた選手は、契約という狭きゴールに向かって多少なりとも前進したが、これで確実とはまったく言えない。まさに「神のみぞ知る」状況だ。
ちなみに、筆者が先週の記事で注目のトライアウト参加選手として取り上げた松本啓二朗(元DeNA)は4打数1安打、片山博視(元楽天)は打者4人に対し被安打1、2奪三振という内容だった。
この結果を各球団の担当者はどう見たのか。ほかの選手も含めて、今後の去就を注視したい。
文=森田真悟(もりた・しんご)