昨シーズンは期待された成績を残せなかったものの、今シーズンは開幕から好投を続けている投手がいる。
ヤクルトの開幕投手となったブキャナンがそのひとりだ。来日1年目の昨シーズンは、チームで唯一の規定投球回到達を達成するも6勝13敗、防御率3.66と今ひとつの出来だった。
しかし、2年契約を新たに結んで今シーズンを迎えたブキャナンは、開幕投手に指名されると6回を1失点と好投。続く2戦目も8回を無失点で2連勝。3戦目は白星こそつかなかったが、9回途中2失点と好投し、ここまでの3試合で防御率1.23。小川泰弘、星知弥らが離脱しているなか、ローテーションを支えている。チームの最下位脱出にブキャナンの奮闘は欠かせない。
次に挙げるのは石川歩(ロッテ)。昨シーズンは涌井秀章とともに二本柱として期待されながらも、3勝11敗と大きく負け越した。しかし、今シーズンは開幕から2連勝。防御率1.32と一昨年の調子を取り戻してきた。2試合連続でクオリティスタート(6回以上で3失点以内)を達成していることも明るい材料だ。
13回2/3で与四球7は少し多いが、粘りの投球で要所を締めている。井口資仁新監督にとって計算できる大事な先発投手のひとりだけに、復活は嬉しいところ。
昨シーズンまで1軍での実績はないものの、開幕から好投を続ける投手もいる。
2年目のアドゥワ誠(広島)もそのひとりだ。昨シーズンは1軍登板がなく、2軍でも防御率10.36とプロの洗礼を浴びた。今春はキャンプ、オープン戦で結果を出し、開幕1軍を勝ち取ると、ここまで中継ぎとして6試合に登板して無失点。今村猛、ジャクソン、中崎翔太と勝ちパターンが確立されているために、比較的プレッシャーのない場面での登板が多いものの、十二分な成績を残している。今後の成長にも期待できそうだ。
現時点のヤクルトにおいて唯一の中継ぎ左腕である中尾輝も好調だ。アドゥワ誠同様、1年目の昨シーズンは1軍で2試合に登板するも、防御率11.25と通用しなかった。しかし、今シーズンは中継ぎとして1軍に定着。4月8日の巨人戦では3回を無失点に抑え、プロ初勝利をマークしている。回跨ぎもこなす貴重な中継ぎ左腕として、この勢いを持続したい。
中日のドラ1ルーキー・鈴木博志も即戦力の期待に応える働きを見せている。1年目の鈴木博に、もちろん昨シーズンの実績はない。しかし、キャンプ、オープン戦の好投でセットアッパーの座を勝ち取ると、ここまで5試合に登板し無失点。与えた四球もわずかに1と安定した投球を見せている。この投球を続けることができれば、シーズン中にクローザーへの配置転換があるかもしれない。
開幕ダッシュに成功した選手がいる一方で少し、心配される投球が続く選手もいる。なかでも、昨春のWBCで日本のクローザーを務めた松井裕樹(楽天)は気がかりだ。7試合の登板中、5試合で失点し、防御率7.71。昨シーズンのような投球が影を潜め、打ち込まれるケースが増えている。梨田昌孝監督が今度どんな起用法を考えているのか気になるところだ。
2年目の有吉優樹(ロッテ)も7試合中、3試合で失点。4月7日の日本ハム戦では3本の本塁打を浴びるなど打ち込まれている。昨シーズン、53試合で防御率2.87。ルーキーイヤーから大活躍したが、フル回転した疲れが溜まっているのか。頼れる中継ぎだけに、復調が待たれる。
メジャーリーグから復帰した上原浩治(巨人)も心配だ。開幕から4試合連続無失点と好投を見せたが、ここ2試合は1回を投げきることができず、ともに3失点と中継ぎに失敗している。澤村拓一も打ち込まれており、今後の巨人のブルペン編成に変化があるかもしれない。開幕ダッシュ成功から一転しての乱調だけに気になるところだ。
開幕から15試合程度しか消化しておらず、まだまだペナントの行方はわからない。開幕ダッシュに成功した投手は好調を維持し、躓いた選手は立て直しを図り、チームの勝利に貢献することを期待したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)