【この記事の読みどころ】
・元巨人の村田透が3Aで最多勝&メジャーで初登板!
・北米プロ野球には35の国と地域から選手が集まる
・インド、モルドバ、南アフリカからプロ野球に挑戦している選手もいる
去る9月24日、2つある3Aリーグのチャンピオン同士の頂上決戦「トリプルAナショナルチャンピオンシップ」がテキサス州エルパソで行われた。この一発勝負を制したパシフィックコースト・リーグのチャンピオン、フレズノ・グレズリーズ(アストロズ傘下)の優勝でアメリカ・マイナーリーグの2015年シーズンは幕を閉じた。
この試合では敗れてしまったものの、インターナショナル・リーグのチャンピオンとなったのはコロンバス・クリッパーズ(インディアンス傘下)。このブルペンで待機していたのは村田透(元巨人)だ。この試合でも登板はなく、また、6月末に続くコールアップ(メジャー昇格)の声はかからず、彼のシーズンも終了してしまった。
ところで、カナダを含む北米では、一体どれだけの選手がプレーしたのだろうか。シーズン中にロースターの変動はあったが、実に8545人の選手が上はメジャーリーグから、下は独立リーグまで、各地に散らばるプロチームでプレーしていた。
彼らの出身国・地域数は実に35を数える。
約7割が北米出身で、日本でもおなじみ、2013WBCの覇者であるドミニカ共和国は1068人を北米プロ野球に送り出している。このドミニカをはじめとするラテンアメリカ、カリブ地域出身者の数は2112人を数え、今や一大勢力をなしている。アメリカへ渡った日本人選手が、片言のスペイン語を覚えて帰ってくるのもうなずける。彼らは北米以外の出身者の9割を占めるので、アメリカで外国人選手と言えば“ラティーノ”というのが今や相場となっている。
彼らの出身国は、ベネズエラやメキシコ、パナマといった、NPBでもおなじみの国ばかりではなく、野球ではあまり名の聞かない、ホンジュラス、ハイチ、バハマに、“陸上の国”というイメージのあるジャマイカなど多岐に及ぶ。前回のWBCで強豪を破って予選を突破し、第1次ラウンドで日本のファンにも強烈な印象を残したブラジルからは7人の選手が北米に渡り、そのうち2人がメジャーでプレーしていた。
これらの選手は、今や世界中に広がるメジャーのスカウト網にかかり、アメリカにやってきた選手で、もちろん即戦力ではなく、育成される存在だ。彼らの育成の場として機能しているのがルーキー・リーグ。ルーキー・リーグのそれぞれのチームでは、チームの過半数が外国人というのは珍しくなく、ドミニカンがマジョリティというチームすらあるくらいだ。
名をあまり聞かない“野球発展途上国”の選手だけでなく、ドミニカンやベネズエランでも、期待されてアメリカにきたものの、競争に敗れ、モノにならなければ、簡単に契約を切られてしまう。ルーキー・リーグからシングルA、2A、3Aと上がるに従い選手は絞られ、一部の勝ち残った選手が、メジャーリーガーとなっていく。
その過程で切り捨てられていく選手は多く、ほとんどの国はマイナーリーガーの割合が高い。そんな中、ラテンアメリカの国々で例外なのは、キューバだ。現在のところ正規ルートではアメリカに渡れない彼らは、即戦力を期待できるレベルでないと、リスクを冒してまで北米野球に挑戦できないということだろう。しかし、アメリカとキューバの国交正常化が進む中、ラテンアメリカ勢の勢力図が大幅に変わることは必至だ。
メジャーリーガーの割合が多いという点では、アジアの2大野球大国、日本と韓国の名前が挙がる。自国にプロリーグがある場合も、選手たちはリスクを冒してまで渡米しない、ということだ。
ただ、同じアジアでも台湾人のマイナーリーガーの多さは、この国のプロリーグの報酬の少なさによるものだろう。
メジャーのスカウト網は中国にも広がり、アカデミーも開設されたというが、ルーキー・リーグに1人しか送り出していない、という現状からはこの地のスカウティングが難航している様がうかがえる。
このほか、アジアからはインドがシングルAに1選手を送り込んでいる。映画「ミリオンダラー・アーム」のモデルにもなったリンク・シンだ。今年はパイレーツ傘下のシングルA、ブラデントン・マローダーズに在籍していたが、故障しているのだろうか? マウンドには上がらなかったようだ。