北信越地区代表の敦賀気比の優勝で、12日間の熱戦を終えた今年のセンバツ。オフィシャルの選手表彰などはないが、もし大会MVPが選ばれるなら、準決勝での2打席連続満塁ホームランに加えて決勝戦の8回にも試合を決める2ランを放った松本哲幣が有力候補に挙げられるに違いない。14打数7安打の大暴れで、グランドスラム連発が春夏通じて初なら、個人で3本のアーチはセンバツ最多タイ(10人目)でもあった。
とはいえ、野球はチームスポーツ。ホームランを打ちまくった松本にしても、その手応えと同等か、それ以上の喜びを感じたのが優勝だったのではないだろうか。
やや気が早い話だが、夏の大会に目を向ければ、春夏連覇のチャンスがあるのは当然、敦賀気比だけ。これまで、この偉業を達成したのは1962年の作新学院、1966年の中京商(現中京大中京)、1979年の箕島、1987年のPL学園、1998年の横浜、2010年の興南、2012年の大阪桐蔭の7校のみ。敦賀気比にも、当然その期待がかかるわけだが、その前にまず福井大会を勝ち抜かなければならない。
地方大会突破の可能性に対しては、さまざまな観点からの考察が可能だろう。そこで1つ、「松本の3本塁打」をキーワードとして見てみれば、そう簡単ではないことがわかる。
というのも、過去にセンバツで最多タイの3本塁打を記録した9選手の所属校のうち、夏の甲子園にも出場できたのは、1984年のPL学園(清原和博)、1989年の上宮(元木大介)、1992年の星稜(松井秀喜)、1995年の観音寺中央(大森聖也)、2013年の浦和学院(?田涼太)の5校(カッコ内は3本塁打を記録した選手)。残る4校は、突出した勝負強さを誇った好打者を擁しながらも、地方大会で散っているのだ。「夏→春」に比べて、戦力をキープしやすい「春→夏」でもサバイバル。センバツで活躍しようが、決して安泰ではない。
さらに、この勝ち上がった5校とて、本大会ではPL学園(春は準優勝)が準優勝、上宮(春は準優勝)がベスト8、残りの3校は1〜2回戦で姿を消している。
今夏の甲子園・第97回全国高等学校野球選手権大会は、8月3日に大阪のフェスティバルホールにて組み合わせ抽選会を実施し、8月6日より15日間の日程で開催されることが決定している。
例年より早いのは、18歳以下の野球のワールドカップが甲子園で行われるためで、各代表校の甲子園練習も実施されないとのこと。甲子園練習と本番の関連性は定かではないが、北京オリンピックの影響で同様の措置がとられた2008年の夏は、地元の大阪桐蔭が優勝している。
いずれにしても、夏に向けての球児たちの戦いはすでに始まっている。母校凱旋時の記者会見で、敦賀気比の篠原涼主将は、地元の応援への感謝を述べるとともに「これからも一生懸命練習していきます」と決意を新たにしていた。6月後半から始まる各地方大会、とりわけ福井大会(7月11日開幕予定)には注目したい。