今シーズン前、キャンプ地に入ったラミレス監督はメディア取材で「スモールベースボールが重要だ」と語っていた。
しかし、その言葉とは裏腹に、シーズン序盤から梶谷隆幸をメジャーリーグよろしく「強打の2番」に据えたように、パワーとスピードを兼ね備えた打者を上位打線に並べ、攻撃にリソースを集中する姿勢を見せていた。
攻撃的布陣を敷いたDeNAは好調のロペス、首位打者を争う宮崎敏郎をエンジンに粘り強く戦い、筒香嘉智が復調の兆しを見せるなか、7月から貯金生活に入ったのだった。
正直、それまではスモールベースボールの片鱗すら感じられなかった。往年のマシンガン打線を蘇らせようとするような打線偏重の采配に見えた。それがここにきて、いきなり変貌したのだ。
前から決めていた計画を淡々と実行するように、ラミレス監督はスモールベースボールに舵を切った。パワーヒッティングの梶谷を2番から7番に下げ、より自由にバッティングできる環境に置くと、石川雄洋や田中浩康ら小技がきく選手を2番に据えた。
これは、「負けない野球」もしくは「長打に依存しない打線」にシフトする、ということだろう。
勝率5割を超え、Aクラス定着を確信した瞬間、ラミレス監督の目線は2位、いや優勝をとらえていたに違いない。たとえ今シーズンの優勝はまだ無理だとしても、Aクラスに根を下ろせると確信した上で、さらに上位を獲るための戦略変更だと、筆者は見ている。
しかし、実際のところスモールベースボールはうまく機能するのだろうか。
ラミレス監督の頭のなかでは、理想のスモールベースボールがすでに展開されているのかもしれない。しかし現状、犠打も盗塁も特に少ないチーム状況であることは事実だ。
そして「負けない野球」をするためには、まだまだ先発ローテーションが安定していない。勝ち頭の6勝を挙げている濱口遥大はオールスター前に肩の違和感で離脱した。今のチームの好調がシーズン終了まで続くと楽観視できない状況だ。
しかし、今は弱みを補って余りある攻撃力で踏ん張れている。この間に、本当に「負けない野球」ができる状態を整えたい。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)