「最近、乱闘が減ったなあ……」
ここ数年、オールドファンの間からこんな声が聞かれる。時代も時代であり、暴力沙汰が減るのは好ましいこと……とも言えるが、一昔前のクロマティ(当時巨人)vs.宮下昌己(当時中日)やアリアス(当時阪神)vs.入来祐作(当時巨人)などが繰り広げたド派手な乱闘、さらにはガルベス(当時巨人)のご乱心を思い出すと、あのときのワクワク感はウソだったと一言で片付けるわけにもいかない。
しかし、乱闘が減ったとはいえ、硬球を扱い、自身の生活もかかり、選手同士の接触もあるプロ野球では、どうしても頭に血が上るシーンが出てくる。そこで今回、現在のプロ野球において、いざとなったら闘志を発揮する選手をリストアップしてみた。
5月13日、阪神vs.西武の5回にマートンがこの日、2個目の死球を受け、ブチギレ。郭俊麟(西武)に対し、明らかに「F」ワードを連発し、怒りを露にした。
虎党ならよく知っていることだが、マートンはイライラ行動の常習犯。日本に来て6シーズン目となるが、特にヤクルトの捕手に対するタックルなど、小競り合いを頻繁に起こしている。現球界でド派手な乱闘が起こるとすれば、マートンがトリガーになる可能性は高いが、意外にも(?)本人から向かって行くタイプではない。
さらに度重なる死球などで高まっている阪神首脳陣のピリピリムードも見逃せない。あってはならないことだが、現在では珍しい「当てられたらGO!」のサインが出ても全くおかしくない。
相手は広島、ヤクルトなど、最近確執のあるチームが有力。交流戦明けの対戦では両軍のベンチの雰囲気にも注目したい。
5月1日、西武vs.楽天の7回、岡本篤志(西武)から背中への死球を受け、両手を広げて吼えたのはペーニャ(楽天)だ。
乱闘による退場こそないものの、ペーニャの“死球→ブチギレ”はもはや方程式とも言える。ソフトバンク〜オリックス時代には、西武や現所属の楽天を相手に一触即発のにらみ合いも引き起こしている。
また、審判の判定に対する抗議も頻繁。3月29日にはアウトコースのボール球をストライク判定され、激怒。アウトコースにバットで何度もラインを示し、自身初の退場になった。しかし、ペーニャの面白いところは判定に怒っている時、リプレイを見ると、審判の判定が絶対でありながらも、だいたいペーニャが正しいように見えてしまうこと。ありがちな理不尽なイラ立ちではなく、見事な選球眼からの激怒は1つの見どころとも言える。
普段のキャラクターからは想像しにくいが、試合に入ると闘志をみなぎらせるのが中島裕之だ。西武時代から度重なる死球は許さないスタイルで、過去には現在所属するオリックスと遺恨も発生していた。
アメリカ帰りで死球を受けた際のもの凄いオーラはパワーアップ。5月20日に中田賢一(ソフトバンク)から2打席連続の死球を受けると、静かな表情と鬼神の宿るオーラで捕手を一喝。試合に入ると人が変わる、とはまさに中島のことだ。
ブチギレといえば、死球を当てられた打者のイメージが強いが、バーネットは最近ではめっきり減った武闘派投手だ。
髪とヒゲが伸びている時にはドラムスティックさえあれば、ベテランメタルバンドのアーティスト写真に紛れ込めそうな風貌で、ときに見せる盛大な雄たけびは迫力満点。その闘志はテレビから3Dで飛び出しそうなほど。その気迫は往年の名外国人プロレスラー、ブルーザー・ブロディを彷彿とさせる。
そんなバーネットのみなぎる闘志が相手に向かえば、ひとたび火薬庫状態に。昨年はチームメートのバレンティンとベンチ裏で一悶着を起こすなど、何かとお騒がせな選手だ。
そんなバーネットだが、今週末に遺恨の対決を迎える。相手はロッテのクルーズ。昨年、神宮球場で行われたロッテ戦で、クルーズにホームランを許したバーネットは、試合が決まっているのに(ヤクルトの大量リード)、悠々とベースを回るクルーズに対し、「さっさと回れ」と挑発。三塁を回ったあたりでそれに気付いたクルーズと「Fワード」合戦を繰り広げた。
昨年のこととはいえ、お互いが根に持っていれば何かが起こるかもしれない。6月5日〜7日のヤクルトvs.ロッテの終盤は目が離せない展開になりそうだ。
■プロフィール
落合初春(おちあい・もとはる)/1990年生まれ、広島県出身。編集者。大学時代から編集プロダクションで勤務し、野球や歴史の媒体制作に携わる。元プロレスレフェリー。