イヌワシに低空飛行は似合わない
だから、もっと高く、もっと強く──
「絶滅危惧種に指定されているイヌワシの生息数が大幅に減少。500羽程度となっていることが分かった」
──先日、こんなニュースが報じられた。日本イヌワシ研究会の調査によれば、1986年以降、イヌワシの生息数は減り続けていて、過去33年でつがいの数は3分の2に減り、繁殖成功率も下がっているという。
イヌワシにとって種の存続の危機! この「第二のトキ」になりかねない状況を見かねて、ある企業がイヌワシの住む森を守る活動をスタートさせている。その企業こそ楽天株式会社。なぜなら、楽天が親会社であるプロ野球球団・楽天のマスコット「クラッチ」のモデルがイヌワシ(=ゴールデンイーグル)だからだ。
閑話休題。古来より勇壮な姿で空を舞い、日本を見守ってきたイヌワシ。このイヌワシは食物連鎖の頂点に位置しているため、これ以上、数が少なくなると生態系全体への影響も懸念されている。
そんなイヌワシのように勇ましく、球界の頂点に君臨してほしい……楽天の球団名とマスコットにイヌワシが採用された背景にはそんな思いがあったはずだ。もちろん、2013年の日本一を忘れたわけではないが、それ以外の年はBクラスがほぼ定位置。イヌワシらしからぬ低空飛行が続き、今シーズンもここまで下位に低迷中だ。
とにかく点が取れない。4月13日時点でのチーム得点数「30得点」は12球団最下位。だからこそ、いま一度「クラッチ」が意味する原点に立ち返る必要があるだろう。
ファンからの公募で決まった「クラッチ」という名前。「チャンスに強い打者」を英語で「クラッチヒッター(clutch hitter)」と呼ぶことに由来している。さらに「clutch」のそもそもの意味は「ぎゅっとつかむ、わしづかみにする」。つまり、「チャンスに強いチームになって、ファンの心をわしづかみにしてほしい」という願いが込められているのだ。
誕生時からここまでファンの存在を意識したマスコットは、12球団の中でも例が見当たらない。そんなファン目線極め付きがユニフォームに刻印された背番号だ。クラッチの背番号「10」は「10番目の戦士」という意味。この番号は球団創設時に「ファンの番号」として永久欠番に指定されたもので、クラッチはファンの代表として背番号「10」を身につけている。
松井裕樹をストッパーに起用したり、超機動力野球を標榜したりと、現有戦力の中でできることは何かを模索し、奮闘している楽天。だが、本当に必要なのは、ファンの戦う気持ちも力に変えて、チャンスを生かす勝負強い打者の存在のはず……そう思っていたら、12日の試合では銀次が自身初のサヨナラ打で勝負を決めた。
銀次は岩手県出身。岩手県もまた、イヌワシの繁殖地として確認されている地域だ。イヌワシの気高い意志を誰よりも理解しているだろう男の貴重な一打をキッカケに、チームは高く舞い上がることができるだろうか?
◆クラッチ・パーソナルデータ
所属:東北楽天ゴールデンイーグルス
背番号:10(楽天唯一の永久欠番)
デビュー年:2005年
出身:不明
身長:ウエストと同じくらい
体重:不明
性別:未確認だが一般的には男の子
他のマスコット:
クラッチーナ……性別は未確認だが一般的には女の子。クラッチとの関係性は不明。
Mr.カラスコ……球団非公認マスコット。