かつてのプロ野球のキャンプといえば、比較的に温暖な四国や九州をキャンプ地に選ぶ球団が多かった。しかし、現在はさらに暖かい沖縄本島がキャンプ地の主流となっている。離島の石垣島ではロッテ、久米島では楽天がキャンプを行う。キャンプ日程の途中から沖縄に入る広島、巨人も含めれば、12球団中9球団が沖縄をキャンプ地にしている。
1980年代初頭、日本ハムが名護でキャンプを実施したのを皮切りに増えていった沖縄だが、当初は「雨が多い」など懐疑的な意見が多かった。しかし、キャンプを誘致したい沖縄県が積極的にメイン球場、室内練習場などの施設を充実させたことで他球団も追随した。さらに、キャンプを行う球団が増えると、練習試合やオープン戦を組みやすくなる。このような事情もあり、沖縄がキャンプ地の主流となっていった。
また、沖縄でキャンプを行う球団が増えたことは、高校野球にも影響を与えるようになった。沖縄の子どもの身体能力の高さはもちろんだが、小学生の頃からプロ野球のキャンプに接したことでレベルアップが図られ、1999年、2008年には沖縄尚学高がセンバツ優勝。2010年には興南高の春夏制覇。キャンプ地の主流となったことは、沖縄勢の甲子園での活躍と関係が深いと思われる。
現在、海外でキャンプを行っているのは日本ハムのみ(アメリカ・アリゾナキャンプ。今思えば考えられない話かもしれないが、1980年代から1990年代初頭にかけては、多くの球団が海外で春季キャンプを行っていた。巨人のグアムを筆頭に西武のハワイ、中日のゴールドコースト、近鉄のサイパン、ヤクルトのユマ……。
海外キャンプで今も語り継がれているのは、巨人が1961年に行ったアメリカ・ベロビーチキャンプだ。1950年代から他球団に先駆けて海外キャンプを敢行していた巨人。川上哲治監督になって初めての春季キャンプに選んだ地が、フロリダ州ベロビーチにドジャースが保有する「ドジャータウン」だった。
このキャンプで巨人がドジャースから学んだのが「ドジャースの戦法」だ。徹底したチームプレーを重んじる「ドジャースの戦法」を取り入れた巨人はその後、9年連続日本一となり一時代を築く。
各球団のキャンプ集客事情に目を向けると、ソフトバンクの宮崎キャンプが人気だ。
宮崎市西部の生目の杜(いきめのもり)運動公園で行われ、メインスタジアムのアイビースタジアムを中心にサブグラウンド、室内練習場の「はんぴドーム」などの充実した施設が揃う。はんぴドームに隣接したブルペンには観客席が設置されており、間近でソフトバンク投手陣の投球練習を見ることもできる。
また、施設内中央にある通称「ホークスビレッジ」では、宮崎の名物が多く並ぶ飲食店のほか、足湯ブースもあり、野球以外のことも楽しめる。土日になると九州全域からキャンプに訪れるファンも多く、実力、ファンサービスともに12球団屈指といえる。
文=武山智史(たけやま・さとし)