まず、オープニングゲームから難解極まる。至学館、市呉ともにセンバツ初出場。東海大会準優勝、中国大会準優勝とどちらも勢いに乗っているが、ここは投手陣に安定感のある至学館に分があると見た。
次に同じく大会1日目には日大三と履正社が激突。昨秋に清宮幸太郎(早稲田実)から5三振を奪った日大三の櫻井周斗が注目を集めるが、その試合では9回8失点。攻略への研究材料も与えてしまったため、明治神宮大会覇者の履正社がロックオンする可能性が高い。
4日目の福井工大福井と仙台育英による北陸、東北の地区優勝校対決も見逃せない。実力は拮抗しているが、ここは甲子園での勝ち上がり経験と勝率から仙台育英を選んだ。
そして難題は早稲田実と明徳義塾の一戦だ。3月10日の組み合わせ抽選会直後から「清宮敬遠か?」といきなり話題の中心となった明徳義塾率いる馬淵史郎監督。この対戦の日は朝から甲子園が“清宮早実”の色に染まりそうだが、3番・清宮の第1打席は初回に訪れる。
そこで“清宮勝負”の選択をすれば、甲子園は大拍手だろう。さすがの清宮といえど、ここで会心の一打を出せるか。ただ、「3割打てば……、7割が失敗云々」という野球の競技的性質上、投手に分があるのではないだろうか。
また、清宮自身が抽選後に「敬遠」に言及したこともフラグ……。馬淵監督は「状況次第」と含みのある反応をしたが、面白くは思っていないだろう。「全国制覇」を口にした歴代最強・明徳義塾が老獪な戦略を駆使して、早稲田実を制圧するとみた。厳しい練習の日々に明け暮れる明徳ナインの「1日でも長く本州にいたい」という血眼の執念も忘れがたい要素だ。
福大大濠と滋賀学園が難しい。昨秋、滋賀学園は近畿大会で“打撃戦の王者”智辯和歌山との壮絶な打ち合いを制し、優勝校の履正社には善戦。一方、福大大濠のエース・三浦銀二は九州大会で初戦から大分商、鹿児島実、秀岳館の全国クラスを相手に3連続完封の好投。ここは三浦に期待して福大大濠の勝利と予想。
予想がしにくいのは大阪桐蔭だ。これまでの実績から見ても、順調な勝ち上がりを予想したいところだが、秋は打線が定まらなかった。1回戦で当たる宇部鴻城は中国優勝校、勝ち抜けても東海優勝校の静岡が待ち構える可能性が高い。どちらかがタレント軍団の大阪桐蔭を倒しそうな予感。
2回戦で健大高崎と仙台育英が当たればこれも面白い。健大高崎の“機動破壊”は脅威だが、仙台育英の柔軟な対応力、戦術眼は伝統的な強み。見どころ満載の高レベルな試合になりそうだが、東北優勝の仙台育英を推す。ただ、関東4強とはいえ、スター軍団の横浜を下している健大高崎の地力もすごい……。
ここは順当な本命で予想したい。準々決勝で履正社と昨年のセンバツ優勝校の智辯学園が激突すると見たが、やはり明治神宮大会優勝の実績を買って履正社。
福大大濠は引き続き三浦を信頼し、準決勝進出と見る。しかし、4戦目はさすがに辛い。2番手以降にラッキーボーイが登場すれば、駆け上がる可能性もあるが準決勝の履正社戦では疲労が出ると予想。
仙台育英は近年波に乗るのが上手な印象があり、2勝を挙げれば勢いに乗って決勝まで勝ち上がりそう。4枚の投手陣も連戦に有利に働くだろう。
明徳義塾は馬淵監督の「全国制覇宣言」を信頼し、準決勝まで足を伸ばすと予想する。
決勝は履正社対仙台育英。ここまで来ると夢想の域だが、やはり秋の公式戦で7人が本塁打を放った履正社打線はすさまじい。明治神宮大会で仙台育英を下していることもあり、履正社を信頼。優勝校に予想したい。
原稿を進めるごとにいろいろな展開が思い浮かび、実に胃が痛い……。あらためて「筋書きのないドラマ」であることを思い知らされているところだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)