まずはCSファイナルステージの結果をおさらいしたい。
第1戦:5対0
第2戦:3対0
第3戦:0対3
第4戦:8対7
第4戦こそ打ち合いとなったが、それ以外は締まった投手戦だった。とくに、第1戦で3安打完封の快投を見せ、DeNAの勢いを削いだジョンソンは、「さすがエース」といえる素晴らしい内容だった。
打撃陣では、とにかく田中広輔の奇跡的な活躍が目立った。12打数10安打、打率.883と、先頭打者としてまさに「神ってる」大活躍。田中の活躍なくしてCS突破はなかっただろう。
この2人の大活躍もさることながら、CS突破の要因には、広島が誇るハイレベルな守備力もあった。そう思えてならない。
今シーズンの広島は好調な打線と投手陣に加え、高い守備力も強さの源となっていた。“世界一”とさえいわれる菊池涼介の二塁の守備は最早、別次元のレベル。今シリーズでも、幾度となくヒット性の当たりを止めていた。目が慣れすぎてしまったファンにとっては、さほどビッグプレーに見えないことが逆にすごい。
菊池の守備以外にも、今シリーズでは守備でのビッグプレーがたくさん生まれた。その最たるものが、第1戦の9回に起きた赤松真人のプレーだ。
9回表、DeNAの梶谷隆幸が放った痛烈な打球は三塁線を鮮やかに抜いた。梶谷の俊足なら、ゆうゆう二塁打となるはず。ファンの誰もが、完封勝利への暗雲を感じ取った。しかし、梶谷は二塁には進めず一塁に残っていた。
何故なら、左翼の赤松が猛烈なスピードで三塁線を破る当たりを好捕。二塁への素早い送球で、梶谷の進塁を防いでいたのだ。
5対0で迎えた9回、勝負はほぼ決していた。しかし、決していたからこそ最後まで手を抜かない赤松のプレーがDeNAにとどめを刺し、第2戦に続くDeNA打線の不振を呼んだのだ。
今シーズンの広島の強さ、その要因をまざまざと見せつけたこのプレーこそ、CSのハイライトだった気がしてならない。
守備といえば、扇の要・石原慶幸の活躍も忘れてはならない。ファイナルステージの全試合でマスクを被った石原は、最終戦こそ7点を失ったが、それ以外のゲームではDeNAの強力打線を見事に手玉に取った。とくに、二冠王・筒香嘉智、ロペスをほぼ完璧に抑え込んだリードは賞賛に値する。
石原は得点圏にランナーを置いた状況で筒香と対戦しないよう、細心の注意を払った。結果、全4試合において、走者が得点圏にいるピンチで筒香の打席を迎えたのは一度きり。投手が大胆に筒香と勝負できるシチュエーションを作った。これが筒香を封じる結果につながったのだ。
また、12球団一とも称される巧みなキャッチング技術で、際どいコースをことごとくストライクにして見せたことも、試合を有利に運んだ一因といえる。
レギュラーシーズン、石原がスタメンでマスクを被った試合での先発投手の防御率は2.65。これは、50試合以上先発出場した捕手のなかではダントツの数字。この防御率が物語るように、投手の特徴を生かし、勝利に導いた石原の功績は大きい。
守備の充実こそが広島の強さの要因だったのだ。
短期決戦では、守備のミスから致命症を負うケースが往々にしてある。強固な守備陣を誇る広島は、その点での心配が少ない。これは日本シリーズにおいても大きな強みとなるだろう。
31年ぶりの悲願、日本一達成は視界良好とみて間違いない。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)