6月は8勝14敗に終わったが、7月には13勝8敗1分、8月は15勝10敗。9月は2日時点で2勝0敗。最重要事項であった夏場の巻き返しは成功したといっていいだろう。
転機は7月12日、前半戦の最終戦。この試合で高橋監督は今季初めてマギーを二塁手としてスタメン起用。さらに二重のサプライズで「2番」に置いたのだ。
「二塁・マギー」は盛んに囁かれていたが、守備面の不安を考えるととっておきの秘策だった。当時は周囲の声に押されたやぶれかぶれの策にも思えたが、確固たる意思表明だった。
この試合を機に巨人打線は急速に固定化された。8月は上位打線をほぼ変えず、以下のオーダーで完走した。
1(中堅):陽岱鋼
2(二塁):マギー
3(遊撃):坂本勇人
4(一塁):阿部慎之助
5(三塁):村田修一
6(左翼):亀井善行
7(右翼):長野久義
8(捕手):小林誠司
相手投手に応じて亀井善行、長野久義の入れ替えはあったが、ようやく不動の態勢をとることができた。
そもそも前半戦は動きすぎた。陽岱鋼の故障や長野の不調など想定外の要素もあったが、13勝12敗で貯金1の3、4月は3番・坂本勇人、4番・阿部慎之助、5番・マギーでクリーンアップはほぼ固定化されていた。
5月になって高橋監督は動く。中井大介、立岡宗一郎の1、2番コンビの調子が上向かないと見るや、その変革に着手したのだった。橋本到、石川慎吾、重信慎之介などを起用したが、小手先感は否めない。これが悪夢のはじまりだった。
結局、5月20日には当時、打率.217と苦しむ長野を1番で起用。2試合連続マルチヒットを記録したが、これは、3日前には代打待機させていた長野を急遽カンフル剤として指名した起用だった。
迷走も迷走である。さらに連敗中にはクリーンアップも解体。1番に坂本を起用したかと思えば、連敗脱出した日は1番・陽、2番・坂本という珍オーダーになっていた。はっきり言って連敗が伸びていてもおかしくはなかった。坂本は連敗脱出の翌日から体調不良でスタメン落ち。心労が伝わる出来事だった。
スタメンを見るだけでいかに当時の巨人が情緒不安定だったか丸わかりだ……。
ただし、高橋監督の大胆な決断は成功する傾向にある。次回は今後の展望を描きたい。
(成績は9月2日現在)
文=落合初春(おちあい・もとはる)