ヤクルト6位 宮本丈・大学選手権でサヨナラ満塁弾と勝負強さはバツグン
2017年プロ野球ドラフト会議で、総勢82名の選手が指名された。
2018年からのプロでの活躍に期待したい。
週刊野球太郎では、ドラフト会議の直前にインタビューした指名選手18名を特集!
プロで活躍するために戦ってきたドラフト候補と、彼らの「真価」を最も熟知している監督さんを取材した貴重な「証言」をお届けします。
今回の指名選手
ヤクルト ドラフト6位
宮本丈(みやもと・たけし)
181センチ79キロ/右投左打。1995(平成7)年4月3日生まれ、大阪府豊中市出身。履正社高では1年秋からベンチ入り、2年秋から三塁でレギュラー。2、3年春に甲子園出場。3年夏は右手小指を骨折し欠場。奈良学園大では1年春から遊撃のレギュラーとなり、これまでに首位打者を3度獲得。同大初の大学日本代表として日米大学野球、ユニバーシアードにも出場。
酒井真二監督の証言
★最初の印象
履正社の3年夏は故障で試合に出られずに終わりましたが、力は十分。東京の強豪大学へ進んでおかしくなかったのですが、ウチにきました。才田慶彦コーチが中学から知っていたので、そのつながりも大きかったです。バッティング、守備とも堅実で実戦的。4年間ショートでいく、と入学時に決め1年春から起用。想像以上の成長を見せてくれました。
★無類の勝負強さ
一番の魅力は勝負強いバッティング。ランナーがいて、「ここが試合を決める」という場面で素晴らしい力を発揮します。集中力が高く、スイッチが入るとしゃべりかけても気づかないほど。昨年の大学選手権でホームラン2本、関西国際大戦ではタイブレークでサヨナラ満塁ホームラン。まさに「ああいう場面」で打ってくれます。
★深夜3時まで素振り
首位打者も3回獲り、安定して高いアベレージを残してきましたが、やはり練習の賜物。普段から最後までグラウンドいます。昨年の大学選手権の時も試合前日、ホテルの外で夜中の3時までバットを振っていたとフロントの人にあとから聞きました。一人で練習で
きるのも、この先の強味です。
★貫いたプロへの思い
2年秋に練習参加した社会人の強豪チームから、その場で「ぜひ」と誘っていただきました。しかし、本人は他からの誘いも含め断り、「プロを目指します」。その時点ではまだ夢のレベルだったのに、高校3年で面談した時、「奈良学園大で成長してプロにいきます」と言った思いを貫きました。
★これから
ウチでは3番を任せ、一発も放ち、ランナーを還す役割を担ってきました。大学日本代表での打順は2番や9番。この先、トレーニングで体も成長するでしょうし、技術も磨かれ、どういうタイプになっていくのかわかりません。ただ、打順を考えれば6、7番が一番持ち味が生きそう。最近は大学からプロへ進み、活躍している野手はほぼ関東出身。関西代表のつもりで頑張ってほしいです。
監督さんプロフィール
酒井真二[さかい・しんじ]
1977(昭和52)年生まれ、奈良県出身。天理高〜奈良産業大(現・奈良学園大)。現役時は1年下の山井大介(中日)らと大学選手権ベスト8。10年間の一般就職を経て同大コーチ、2013年より監督に就任。
本人の証言
★誘いの中から奈良学園へ
大学からプロへ行くと目標を決め奈良学園大へ進学しました。どこでやろうと目立つ結果を残せば必ず注目してもらえると考えましたし、独特な打撃フォームなので僕を中学の時から知る才田コーチがいたことも大きかったです。
★好投手を打った自信
1年、2年と大学選手権に出ましたが1回戦負け。全国でアピールできず、このままだとプロの夢も遠くなると不安でした。だから、3年春の大学選手権で結果を残せたのが大きかった。好投手を打ってきたことも自分の支えでした。櫻井(俊貴)さん(立命館大→巨人)からは1年の大学選手権と5リーグ対抗戦で、岡田(明丈)さん(大商大→広島)からも5リーグ対抗戦でヒット。大阪ガスの酒井(知史)さん(ロッテ)からはオープン戦で一発。プロレベルの球を打ち、自信になりました。
★オリジナルな構え
打席では「ほぼノーステップ」で重心を落とし、ベースにかぶさるように構えます。中学の時は完全ノーステップで、高校ではいろいろ試しましたがしっくりいかず、高校2年秋からほぼ今の形です。目線が安定し、下半身をうまく使えるようになりました。ただ、周りが理解してくれるまでに、いつも時間がかかります。この先も早く結果を出さないと、フォームを変えようという話になるはず。初めが本当に大事だと思っています。
★これから
目指す選手像は長谷川勇也選手(ソフトバンク)や角中勝也選手(ロッテ)で、バッティングをアピールしたい。勝負強さ、簡単に打ち取られない粘っこさ。今の打ち方のおかげで球を長く見られて、フォアボールも取れます。相手に嫌がられる選手になりたいです。
守備・走塁に関する証言
監督
昨年の代表選考合宿で京田(陽太)選手(中日)、吉川(尚輝)選手(巨人)と一緒になり、守備の一歩目やスピード感が変わりました。ただ、まだ成長段階。プロレベルの強肩ではなく、今後は二塁、三塁を含め守っていくことになるでしょう。
本人
盗塁は好きです。1年秋、2年春に11個、通算50個程決めて成功率は上がっています。プロの技術を学んで走れる走者になりたいです。
フォームに関する証言
監督
わずかに右足を引き、一見ノーステップ。その上で重心を落とし、ベースにかぶさる特徴的な構えです。この先、プロのスピードで内角を突かれ、外のチェンジアップという攻めに対応できるか。
本人
高校時代に「泳ぐ形はダメで詰まるのはOK」と指導されてきました。だから今も、センターから左を意識して投球を待ちながら、内は反応で返すのが基本です。内を意識しすぎず、打てる球を確実にとらえることを大事にしたい。
グラウンド外の素顔
酒井監督いわく「受け答えの間とか言葉のチョイス…。独特の感覚を持った宇宙人」。確かに様々な思考の一端にオリジナルを感じる。自己診断は「マイペースで何をするのも一番最後。試合後もすぐには動けず、いつも遅くなります」。ただ、試合後の話は集中力の裏返しと思われる。集中しきった反動で虚脱感に襲われる、と。この強力なオンとオフの切り替えが無類の勝負強さの源でもあるのだろう。
本稿は雑誌『野球太郎 No.024 2017ドラフト直前大特集号』(2017年9月23日発行)に掲載された人気企画「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」から、ライター・谷上史朗氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。
取材・文 谷上史朗
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