まず外せないのはこの男。日本野球界の至宝になりうる可能性を大いに秘める清宮幸太郎の行方だ。
大学進学との天秤になるが実力は申し分ない。当然、プロで見たい選手の筆頭だ。焦点は空きポジションと育成方針。一塁に加えて左翼が清宮育成枠になるだろう。
父・克幸氏(ラグビー・ヤマハ発動機ジュビロ監督)が大の虎党ということで早くから名前が挙がっていたのは阪神。現在の阪神は新助っ人のロジャースが一塁を守るが、ポジション争いになるのは明白だ。
今オフには中田翔(日本ハム)のFA移籍も囁かれており、阪神にとっては両にらみの秋になるが、生え抜きの「30本塁打超えスラッガー」がここ30年出ていないのは気になるところ。1985年の掛布雅之、岡田彰布の両氏まで遡らなければならない。現在、その掛布氏が2軍監督を務めるが、歴史的に見ると阪神のスラッガー育成力はイマイチだ。
また、スター選手への「食いつき」という指名傾向を加味すれば、ヤクルトとロッテも指名に踏み切る可能性は高い。
ヤクルトは畠山和洋がいるが、ケガとの闘いを余儀なくされており、高齢化も顕著だ。さらにロッテになると一塁手どころか指名打者も手薄だ。両チームともに投手陣が崩壊しており、即戦力投手も補強ポイントだが、仮に清宮が入団すれば1年目からのフル稼働も期待できる。日本ハムもポスト中田を見据えるならば大いにありだ。
大穴は広島。スラッガーとしては、現段階では新井貴浩とエルドレッドがいるが、数年後の世代交代は必至。ただし、指名においては「一本釣り」を好む傾向にあるので動向に注目だ。西武も森友哉の稼動実績から見て、高卒1年目でも積極起用の可能性はある。現在は栗山巧が指名打者で起用されているが、森が外野に回れば、清宮用に1枠を確保することはできる。
結論から言えば、「ここで見たい」というよりも「早く見たい」気持ちが勝る。1年目は2軍で守備や走塁を鍛えて……というのはごもっともだが、できるならば早く1軍で見られる球団に入ってほしい。
この春から最も評価を上げた投手の一人が市西宮・山本拓実。167センチながら力強いフォームで最速148キロを叩き出し、春季兵庫県大会で快投を連発。今夏は兵庫大会の準々決勝で報徳学園に敗れたが、延長10回を2失点に抑え、優勝候補を相手に番狂わせがあってもおかしくなかった。
特に4回戦は圧巻の投球で上がり目の武庫荘総合に対し、緩急を駆使して15奪三振の完投。勢いだけではなく総合力も見せつけた。
市西宮は進学校で当初は大学進学と言われていたが、評価急上昇でプロ入りもまんざらではなくなってきたとのこと。
見たいのは当然、地元・阪神。昨年は才木浩人(須磨翔風)をドラフト3位で指名している。地元の「公立の星」を2年連続で獲得し、地元成分を充填してほしい。
甲子園行きを決めているドラフト候補は広陵の平元銀次郎。146キロのストレートに加えて、キレ味抜群の高速カーブを操る好左腕だ。
オススメしたいのは西武。炭谷銀仁朗とのギンジロウバッテリーが見たい……というくだらない期待もあるが、近年の西武は菊池雄星をはじめ、野田昇吾、武隈祥太など生きのいい左腕が多い。
特に菊池雄星は今の高校生にとっての「あこがれピンポイント世代」。高校生左腕にあこがれの投手を聞くと高確率で菊池の名前が挙がる。多くのお手本がいる環境で「良質スピン」をさらに進化させてほしい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)