開幕から8連勝のロケットスタートを決めた西武。5月はやや落ち着いたものの、ゴリゴリの強力打線が期待通りに機能し、早くも「山賊打線」の異名がつけられている。
きょうび、「山賊」のワードはなかなか耳にしないが、実はこれは福岡を本拠地にした前身・太平洋クラブライオンズ時代の応援歌からきている。2代目の応援歌の2番が「ごつい顔だよ 山賊打線」という何ともパワフルな歌詞。江藤慎一選手兼任監督が指揮を執り、基満男、土井正博、白仁天が在籍した時代で、確かにごついメンバーが揃っていた。
西武に話を戻すと、今季の西武は4番・山川穂高がオープン戦での不調を忘れさせる大活躍で、ここまで13本塁打、43打点をマーク。5月下旬時点で森友哉が7番に回るほどのデキを見せている。8番の炭谷銀仁朗も打率3割に乗せており、メヒアや中村剛也(現在、左肩痛で2軍調整中)が控えに回るほどの強力打線。顔はともかく「山賊」たる迫力を見せている。
今シーズン終了時、「新・山賊打線」はどこまで打ちまくっているのか。歴代プロ野球の最強打線を紹介したい。
■主なスタメン
1(二塁):金山次郎
137試合:打率.311/7本塁打/67打点/74盗塁
2(三塁):三村勲
126試合:打率.265/16本塁打/72打点/13盗塁
3(中堅):小鶴誠
130試合:打率.355/51本塁打/161打点/28盗塁
4(右翼):岩本義行
130試合:打率.319/39本塁打/127打点/34盗塁
5(一塁):大岡虎雄
135試合:打率.281/34本塁打/109打点/6盗塁
6(左翼):吉田和生(猪佐喜)
91試合:打率.261/13本塁打/49打点/2盗塁
7(捕手):荒川昇治
132試合:打率.268/3本塁打/51打点/25盗塁
8(遊撃):宮崎仁郎
135試合:打率.273/3本塁打/58打点/17盗塁
9(投手):真田重男(重蔵)
73試合:打率.314/2本塁打/36打点/2盗塁
■主な控え
左翼:木村勉
102試合:打率.292/3本塁打/37打点/14盗塁
歴代シーズン最多の908得点を挙げた1950年の松竹・水爆打線。1試合平均6.63点という破格の数字を記録。シーズン98勝(137試合)は歴代2位の勝利数だ。これだけ打てば当然勝てる。
歴史に名を残す水爆打線だが、打力だけではなく機動力もすさまじい威力でシーズン223盗塁もリーグ1位だった。今年の西武は5月28日時点でチーム打率.279、254得点、1試合平均5.64点、56盗塁でそれぞれリーグ1位。機動力を兼ね備えるという面では水爆打線に近いかもしれない。
■主なスタメン
1(右翼):真弓明信
119試合:打率.322/34本塁打/84打点/8盗塁
2(中堅):北村照文
114試合:打率.262/3本塁打/19打点/21盗塁
3(一塁):ランディ・バース
126試合:打率.350/54本塁打/134打点/1盗塁
4(三塁):掛布雅之
130試合:打率.300/40本塁打/108打点/3盗塁
5(二塁):岡田彰布
127試合:打率.342/35本塁打/101打点/7盗塁
6(左翼):佐野仙好
120試合:打率.288/13本塁打/60打点/1盗塁
7(遊撃):平田勝男
125試合:打率.261/7本塁打/53打点/6盗塁
8(捕手):木戸克彦
103試合:打率.241/13本塁打/32打点/0盗塁
■主な控え
中堅:吉竹春樹
118試合:打率.247/2本塁打/16打点/7盗塁
左翼:長崎啓二
68試合:打率.283/6本塁打/25打点/0盗塁
中堅:弘田澄男
85試合:打率.296/5本塁打/22打点/2盗塁
最強打線のひとつとして今も語り継がれるのは1985年阪神のニューダイナマイト打線。バース、掛布雅之、岡田彰布の並びはプロ野球史に残る最強クリーンアップに挙げられる。
この年の阪神はチーム防御率は4.16でリーグ4位。ボコボコに打ち勝ち、優勝を手にした。今年の西武投手陣はチーム防御率3.90のリーグ3位と飛び抜けていない。優勝を手にするにはニューダイナマイト打線に匹敵する打線の奮起が必要だ。
しかし、現時点で西武は1試合平均5.64得点。この年の阪神は1試合平均5.62得点。実は伝説のニューダイナマイト打線を上回っている。
■主なスタメン
1(二塁):片岡易之(治大)
139試合:打率.287/4本塁打/46打点/50盗塁
2(左翼):栗山巧
138試合:打率.317/11本塁打/72打点/17盗塁
3(遊撃):中島裕之(現・宏之、オリックス)
124試合:打率.331/21本塁打/81打点/25盗塁
4(一塁):クレイグ・ブラゼル
130試合:打率.234/27本塁打/87打点/0盗塁
5(右翼):G.G.佐藤
105試合:打率.302/21本塁打/62打点/1盗塁
6(三塁):中村剛也
143試合:打率.244/46本塁打/101打点/2盗塁
7(DH):石井義人
108試合:打率.278/4本塁打/29打点/0盗塁
8(捕手):細川亨(現・楽天)
133試合:打率.238/16本塁打/58打点/0盗塁
9(中堅):ヒラム・ボカチカ
78試合:打率.251/20本塁打/47打点/3盗塁
■主な控え
DH:後藤武敏(現・G後藤武敏、DeNA)
49試合:打率.301/12本塁打/27打点/0盗塁
中堅:赤田将吾
68試合:打率.244/2本塁打/13打点/2盗塁
右翼:佐藤友亮
59試合:打率.302/1本塁打/11打点/4盗塁
一塁:平尾博嗣
55試合:打率.258/2本塁打/9打点/1盗塁
2000年代の西武の強力打線といえば、日本シリーズを制した2008年のNo Limit打線。この年は中村剛也が本格化し、初の本塁打王を獲得。統一球を物ともせず、チームでも198本塁打を放った。
ただし、三振数はリーグワーストの1093三振。ここ数年、西武にも見られる「打線は水物」っぽさはあったが、そこはリーグトップのチーム107盗塁でカバーした。影のキーマンは8番・細川亨。打率こそ、2割前半だったが16本塁打としぶとい活躍。やはり強力と呼ばれる打線は捕手が期待以上の活躍をしていることがほとんどだ。
今年の西武は炭谷銀仁朗も絶好調。2000年代以降の「最強」を山賊打線へ上書きする準備は整っている。
次回は2003年のダイエー・ダイハード打線などと比較する。
(成績は5月28日現在)
文=落合初春(おちあい・もとはる)