オープン戦では打率3割をマークしたT-岡田は、いい状態で開幕を迎えたはずだった。しかし、なかなか結果を出すことができなかった。
3月30日にはスタメンから外れ、4月4日に登録抹消。4月28日時点で、成績は18打数3安打、打率.167と当たっていなかった。
一方、昨季のレギュラー捕手・伊藤光。西武との開幕2戦はスタメンマスクをかぶったものの、チームは連敗。第3戦目は山崎勝己にマスクを奪われ、チームは初勝利を飾る。
以後、伊藤は金子千尋と近藤一樹が先発した試合には出場。しかしチームはいずれも敗戦。打撃の方も19打数1安打、打率.056という成績で精彩を欠いた。
そして4月15日、伊藤は登録抹消となった。降格理由はリード面に問題があるということだった。
2人に共通して言えるのは、非常に真面目であるということ。真面目であるが故に、つまずいた時に深く悩んでしまうのかもしれない。コーチもいろいろと指導しているのだろうが、性格面の改善ばかりは自分で克服するしかないだろう。
登録抹消時には落ち込んでいた伊藤。しかし27歳の自らの誕生日にはSNSで、「周りの人たちに感謝し、頑張ります」と前向きな発言をしている。
T-岡田に関しては、1軍への登録を打診されるも、「自信が無いから」断ったとの噂もあった。これに対してT-岡田はSNSで反論。普段は優しい性格で知られているT-岡田が、これほどまでに怒りをあらわにするのは珍しいことだろう。
西勇輝がノーヒットノーランを達成したとき、涙を流して喜んだ伊藤。ファンフェスタで、退団した坂口智隆(現ヤクルト)の名前の入ったタオルを掲げて球場内を歩いたT-岡田。2人とも優しい性格をしているのだ。
なかなか闘志を表に出さないタイプの2人だが、熱い思いは心に秘めているはず。
4月15日の阪神戦(ウエスタンリーグ)。2対2の同点の8回裏1死一、三塁。ここでT-岡田に打順が回ってきた。それまで3打席凡退していたが、この打席で右中間スタンドにたたき込む3ランを放つ。
この日は京セラドームでの親子試合で、平日の朝にもかかわらず、多くのファンが詰めかけていた。そのファンの誰もが「打ってほしい」と願う場面で、最高の結果を出したT-岡田。まさに記憶に残るホームランだったといえる。
一方の伊藤は4月27日、若月健矢に変わって1軍に再登録され、その日の試合でスタメン出場。悔しさをバネにして、結果を出していくのはこれからだ。
オリックスファンは、2014年の優勝を逃した試合で、人目もはばからずに号泣した伊藤を覚えている。またCSファーストステージ第2戦の、T-岡田の逆転3ランも覚えている。
現在低迷しているチームが浮上するためには、この2人の活躍は必要不可欠。
4月29日に満を持して1軍再昇格を果たしたT-岡田は、5月1日の楽天戦では今季初本塁打を放つなど、チームの勝利に貢献。伊藤も同じ失敗は繰り返すまいと、精進している。
オリックスの勝利の輪の中心に、この2人が戻ってくることを期待したい。
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
大阪在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。