阪神ファンが着用する背番号のついた応援ユニフォーム。お気に入りの選手を着用し応援するのは、ごくごく当たり前のことだ。
ただ、このお気に入りの選手がレギュラー選手でなく、数少ないヒーローインタビューなど受けようものなら、大変なことになるのが甲子園だ。
甲子園球場から阪神電車の甲子園駅までは、数百メートルの距離。この間を移動するときに少なくとも5、6人の人から声がかかる。
「今日はありがとう」
「明日も頼むわ!」
このくらいなら、愛想笑いで済む話しだなのだが……。
「うわっ! 握手してぇ〜」
「ユニ、触らしてぇ〜」
大阪のおばちゃんが、見境もなくやってきて、触っていく。
「俺はビリケンさんやないわ!?」
こう言い返したくもなる(ビリケンさんとは、大阪の通天閣にある像で、足を掻いてあげるとご利益があると言われている)。
反対に、お気に入りの選手のミスで負けたなんてことになれば、気づかれないように応援ユニフォームを脱いで、球場を後にしないと「えらいこと」になるのは想像できよう。
選手とその選手を応援しているファンは完全に「イコール」という方程式が、なぜか阪神ファンには成立しているのだ。
阪神ファンの応援ユニフォームへの愛着はこんなところにも表れている。
交流戦の日本ハムとの一戦、札幌ドームで開催されれば、多くの阪神ファンが空路で札幌入りする。
土曜日の札幌でのナイトゲーム。関西国際空港には、午前中から阪神の応援ユニフォームを着たファンが勇ましく闊歩する光景が見られる。
「まだ、何時間もあるのに、こんなところから着ていかんでも!?」
普通ならそう思いたくなるが、気合十分な心情もわからなくもない。
野球観戦! これだけ楽しめれば、飛行機代も安いものだろう。もちろん、ナイター後の「すすきの」の街も、阪神の応援ユニフォームで溢れかえることはいうまでもない。
今も昔も変わらぬプロ野球人気。最近は12球団すべてに熱狂的なファンがいて、各球場では思い思いの応援で盛り上がる。
そのなかにあって、個性的で、何かがほかとは違う阪神ファン。
おかしくて愛すべき甲子園の阪神ファン。応援ユニフォームについてのあんなことこんなこと。
振り返ってみると……、やっぱり阪神ファンは面白い。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。