12月に入り、各チームの来シーズンへ向けた編成が佳境を迎えつつある。一方の選手たちは自主トレを行いながら、トークショーやイベントなどで試合とは違った一面をファンに見せている。
そんなプロ野球選手や関係者がこぼした「ひとこと」が人生において役に立つことも少なくない。今回はプロ野球にまつわる人物のセリフのなかで、日常生活でも使える名言をご紹介したい。
仕事や人生において駆け引きをする場面は多くある。攻めてばかりで守りがおろそかになってはいけないが、守ってばかりで攻めることをしなければ勝つことはできない。営業先の開拓などもそうだろう。そういったときに思い出したのがこのセリフだ。
「勝負師は逃げるのも大事な芸なんですよ」
名将・鶴岡一人氏(元南海監督)が発したセリフだ。もちろん、「逃げろ」ということが言いたいわけではない。監督(人間)として攻めるのか、それとも守りに入るのか、その判断を瞬時に行うことができないのは困るということを伝えているのだ。
仕事でも、株などの取引でも、人間関係でも、的確な状況判断を求められる瞬間は多い。そういったとき、冷静になって鶴岡監督の言葉を思い出してほしい。撤退することだって、立派な戦術なのだから。
会社員を長らく続けていると、大抵の場合は部下ができ、自分が上司になる。ただ、部下といえども他人である。そして、当たり前ではあるが人間だ。すなわち感情もある。意見が対立することだってもちろんあるだろう。
上司として、その場をまとめなくてはいけない場面も生まれてくる。だが、意見は平行線をたどり、らちが明かない。そんなときに使いたいセリフがこれだ。
「私がルールブックだ」
野球殿堂入りも果たしている、昭和の名審判・二出川延明氏が西鉄・三原脩監督に放った一言である。試合中、三原監督が塁審と言い争いになり、最終的な判断を控室にいた二出川に求めたのだ。本来であれば、ルールブック、いわゆる野球規則を見ればわかることなのだが、この日に限って二出川は持参していなかった。しかし、自信を持ってジャッジを下し、先のセリフを言い放ったのだ。
もちろん、あてずっぽうに言ったわけではない。何度も何度も繰り返しルールブックを読み返してきたからこその言葉だったはずだ。
自分の意見に絶対の自信があれば、ぜひとも使いたいことセリフだ。
生きていれば、うまくいくこといかないことたくさんある。人生のなかでは、うまくいかないことのほうが多いかもしれない。そんなときに思い出したい言葉がふたつある。
ひとつはこれだ。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
「ノムさん」こと野村克也氏(元楽天監督ほか)の言葉だ。さまざまなところで取り上げられているので、この言葉を聞いたことがあるファンも多いはずだ。幸運が重なってよいことが続くことはある。たとえば新規の営業先を獲得することや、プロジェクトの成功なんかもそうだろう。
一方で、うまくいかないときにはそれなりの理由がある。顧客の立場に立っていなかったり、金額面で折り合いがつかなかったりといった具合だ。しかし、うまくいかなかっときこそ、敗因であり原因を探り、分析をして次回に生かすことが重要なのである。
当たり前のように言われていることでもあり、目新しさはないかもしれない。だからこそ、真理として多くの場面、機会で言われているのだろう。
そしてもうひとつはこの言葉。
「8000回以上は悔しい思いをしてきているんですよね、その悔しさと常に、向き合ってきた事実は誇れると思いますね」
イチロー(当時ヤンキース)が日米通算4000本安打を達成したときのインタビューでのセリフだ。4000本の安打(成功)を放つ裏には8000回以上の凡退(失敗、悔しさ)があった、ということを伝えている。安打(成功)だけ取り上げられるが、その裏には失敗、悔しさも数多く経験している。その事実から逃げることなく、向き合ってきたことを誇る。これほどカッコいいことはないのではないだろか。
失敗したら分析をすることも、悔しさと向き合うことも大事だ。どうとらえるかは本人次第と言ったところだろうか。
■参考文献
『勝負師語録』(新潮文庫/近藤唯之著)
『野村の流儀』(ぴあ/野村克也著)
文=勝田聡(かつた・さとし)