昨年、板山が迎えた春季キャンプは、同期のドラ1・高山俊とともに2軍の安芸が出発点だった。掛布雅之2軍監督から、「山山コンビは面白い」とはやされるなど、2人とも注目株だったことは間違いない。
しかし、シーズンが終わってみれば板山と高山の差は歴然。板山は高山との差を埋めるどころか、ドラフトの順位と同様に、圧倒的な力の差を見せつけられた。
その高山は新人王を獲得。シーズン通算136通算安打で新人安打数の球団記録も更新。レフトのレギュラーをほぼ手中に収めた。今シーズンも、競争は熾烈と言われながらも、外野については左翼・高山、中堅・糸井、右翼・福留で当確ランプが灯っている。そう思われていた……。
しかし、状況は一変。糸井の心配されていた古傷にトラブルが発生。内野以上に、外野手の定位置争いは混沌の様相を呈してきたのだ。
「板山が遊撃手争いに参戦!」
板山の打撃を生かすため内野へコンバート。激戦区・遊撃への参戦をにおわせるニュースが報じられたのは、数週間前だった。
昨季から、阪神で頻繁に行われている“複数ポジション制”の導入。この仕組みは、選手個々の出場機会を増やすための手段だが、ポジションを限定することで、選手をプロフェッショナルプレーヤーに成長させるという観点から見ると得策とはいえない。
板山もこの“複数ポジション制”でふるいにかけられようとしている。
複数ポジション制の成功例として、中堅と二遊間の守備を、いずれもゴールデン・グラブ賞クラスのプレーで難なくこなす大和を比較対象にしてはいけない。大和の守備センスは別格なのだ。
それでは、内外野を高いレベルでこなす守備力を持っているとは言い難い板山は、内野、外野どちらに専念すべきなのだろうか?
板山の守備センスが内野向きなのか、外野向きなのか。その答えは高代延博ヘッドコーチや久慈照嘉コーチに委ねるが、筆者もチーム事情から推察してみたい。
現在の外野の布陣を見ると、高山のレギュラーは、今後10年は不動と見ていい。逆に、今季のレギュラーを確約されている糸井、福留のポジションは、年齢から見て必然的に、近い将来空席となる。
内野は、昨季ブレイクした北條史也、追う植田海、ルーキーの大山悠輔と糸原健斗ら、いったんレギュラーを奪えば10年は譲らなそうな選手が揃っている。
もちろん、外野にも横田慎太郎ら若手のライバルはいる。しかし、慣れない内野で競うより、さほど他との差がない外野で勝負する方が、板山にとってはレギュラー奪取への近道となるはずだ。
いずれにしても、レギュラー争いが熾烈なのは言うまでもないこと。しかし、板山の将来を思うと、首脳陣が適切な判断を早急に下し、板山は決められたポジションで結果を残すべきではないか。そう思えてならない。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。