◆田中正義(創価大)
今年のドラフトを語る上でまず外せないのは、創価大の田中正義だろう。高校時代は肩のケガで主に外野手としてプレーしていたが、大学進学を機に再び投手に転向。2年時にチームを春秋連続で全国ベスト4に導いたことで、その名が一気に知れ渡った。
田中の最大の武器は150キロを超えるストレートで、制球力・キレともに抜群。昨夏に行われた大学日本代表対NPB選抜の試合では、プロの有望株相手に4回を投げ、7者連続奪三振を含む無安打・無四球・8奪三振をやってのけるなど、その実力が上のレベルでも通用することを示してみせた。
将来的には先発の柱はもちろん、その制球力のよさから守護神を任せても成功しそうな雰囲気がある。唯一にして最大に心配なのは、故障歴のある右肩の状態だけ。
◆今井達也(作新学院高)
夏の甲子園でスターダムに駆け上がり、一躍ドラフトの筆頭候補まで上り詰めた今井達也。春まで無名だった投手が、まさに右肩上がりで評価を高めていった。この伸びシロには恐ろしさすら感じる。
件の甲子園では、浮き上がってくるような高い回転数を誇る快速球とカットボールを武器に各校の打者をなで斬りに。常時この投球ができるなら、プロでも十分に通用するだろう。
とはいえ厳しい見方をすれば、超高校生級の活躍をしたのはこの夏だけ。また、ストレートが抜けてシュート回転したボールになることもしばしばある。武器の精度を高めるという意味でも、獲得した球団には焦らずじっくりと育ててもらいたい。
◆寺島成輝(履正社高)
今井と異なり、甲子園開幕前から話題になっていたのが“高校生ビッグ3”。そのなかから、ここでは履正社高の寺島成輝を推したい。中学時代から「ボーイズに寺島あり」と将来を嘱望されていた投手が、ラストチャンスで甲子園切符をつかみ、今度はプロへの切符もつかもうとしている。
そんな寺島の持ち味は、140キロ前後のボールを常時両サイドに投げ込むことができる“投球力”。高校生離れした制球力を誇り、ここ1年で打ち込まれた試合がわずか1試合だけと、安定感は今年のドラフト候補の中でもピカイチだ。
ここからさらにストレートと変化球のキレを磨けば、完全無欠のサウスポーになれる。「3年後のエース」を目標に鍛錬を積んでほしい。
◆山岡泰輔(東京ガス)
瀬戸内高時代にエースとして甲子園に出場し、U-18の代表経験もある山岡泰輔。東京ガスではデビュー戦を6回3安打にまとめデビュー戦を飾るなど、1年目から大人の野球に適応。松井裕樹、森友哉世代の有望株が、社会人野球を経て、満を持してプロ野球に殴り込みをかける。
空振りを奪える縦のスライダーをはじめ、チェンジアップ、カーブなどを駆使する山岡だが、一番のストロングポイントは打者の頭のなかにないボールを選択できる洞察力にある。プロのキャッチャーと組むことで、その能力はさらに光るだろう。
また、勝ち気な性格のためリリーフタイプに受け取られがちだが、前述の洞察力を駆使した駆け引きで打者を打ち取っていくため先発の可能性も十分。ストレートに磨きがかかれば、則本昂大(楽天)のような投手になれるだろう。
◆高田萌生(創志学園)
今夏の岡山大会で自己最速の154キロを叩き出すなど、「松坂2世」と呼ばれる右腕。その名をより高めるはずだった夏の甲子園では、盛岡大付高を相手に10失点KOという屈辱の敗戦を喫する。プロでこの汚名を返上し、実力を見せつけられるか注目したい。
150キロ前後のストレートを、試合序盤から終盤までコンスタントに投げられるスタミナとパワーが持ち味。スライダーも高校屈指と、まさに松坂大輔を彷彿とさせる投球スタイルだ。
178センチと上背がないことを懸念材料にするプロのスカウトもいるが、当時の松坂のサイズとほぼ同等なので、持ち前の強いハートが不安を払拭してくれるはず。平成の怪物からバトンを受け取って新世代のエースに!
投手に関しては、夏の甲子園前は“田中正義一択”と言われていた今年のドラフト。しかしフタを開けてみれば、有力株が次々と現れる豊作の年になった。
各球団は“田中一択”の初志を貫徹するのか、それとも新たな選手を選ぶのか。球団名に続いて読みあげられる名前が楽しみでならない。
文=森田真悟(もりた・しんご)