昨年の秋季大会で、2年生ながら名門・星稜高のエースナンバーを背負った奥川恭伸。秋の公式戦では53回2/3を投げ防御率2.85。奪った三振は投球回数を大きく上回る63。まさに主戦の働きをみせ、北信越大会準優勝の原動力となった。身長182センチから繰り出されるストレートは最速146キロを記録。この冬を越して150キロに近づいている可能性もある。
昨秋の石川県大会で骨折したため、マウンドを奥川に譲り、打撃に専念していた主将兼エース兼4番の竹谷理央が、センバツでは復帰し、背番号1を背負う予定。竹谷はチームにとって絶対的な存在のため、奥川がどう起用されるかは流動的だ。
いずれにせよ2人が力を発揮すれば、13年ぶりのセンバツで白星を挙げるだけでなく、日本一も見えてくるはず。中学時代には軟式の全国優勝を経験している奥川のポテンシャルに期待したい。
今センバツでは、激戦区の神奈川から7年ぶりに2校が選出された。そのうちの1校が9年ぶり出場となる慶應義塾高だ(もう1校は東海大相模高)。昨年は高校通算50本塁打の主砲・正木智也(慶應義塾大に進学)を擁しながら甲子園には手が届かず。新チームとなった昨秋は神奈川県大会決勝で東海大相模高に0対12と大敗したものの、関東大会でベスト4に勝ち上がり、センバツ切符を手に入れた。
そのチームの正捕手が2年生の善波力だ。アマチュア野球ファンならこの名字にピンとくる人も多いだろう。そう、明治大の善波達也監督の長男である。
善波は168センチと小柄ながら正捕手の座をつかむと、生井惇己ら上級生投手をリード。チームを引っ張っている。公式戦では打率.286と打撃成績は少し寂しいが、チーム2位タイの10四死球を選んでおり、後ろにつなぐ意識は高い。甲子園の舞台でも縁の下の力持ちとしての活躍を期待したい。
大谷翔平(エンゼルス)、菊池雄星(西武)といった球界を代表する選手をプロ野球の世界へと送り込んだ花巻東高には出世番号がある。大谷、菊池が1年時に背負った「17」がそれだ。昨秋、この出世番号を与えられたのが“新怪物”と話題を呼ぶ西舘勇陽だ。
西舘は昨秋の公式戦では29回を投げ、防御率1.52。4人の投手陣のなかでもっとも防御率がよく安定した投球を見せた。すでに球速は140キロを超えており、150キロも夢物語ではない。大谷ほどではないにせよ、身長182センチと上背もある。角度のある150キロのストレートをセンバツで披露できるか。
ほかにも東邦高の4番を務める石川昂弥、英明高の遊撃手・山上慎太朗ら打撃が売りの2年生は多い。また、今秋のドラフト候補・東妻勇輔(日本体育大)を兄に持つ智辯和歌山高の正捕手・東妻純平も注目を集める。投手では日大三高の井上広輝、秋の公式戦をひとりで投げ抜いた英明高の黒河竜司も楽しみだ。
ドラフト好きにとって大阪桐蔭高の根尾昂、藤原恭大、山田健太、柿木蓮といった今年のドラフト候補を追いかけるのも楽しいだろう。しかし、マニアックに観戦するためにはさらに一歩進み、2019年のドラフト候補にも目を光らせて観戦することをオススメしたい。
文=勝田聡(かつた・さとし)