それは、海の向こうのでも同じだ。英語圏のベースボールファンたちは、独特の造語を生み出し、共有して一体感を味わっている。今回は、そんな本場アメリカのインターネット野球コミュニティー、通称Baseball Twitterの愛すべき住人たちの合言葉のうち4つを前・後編に分けて紹介しよう。
TOOTBLAN(トゥートブラン)
意味:「間抜けな走塁でアウトになる」という意味のThrown Out On The Basepaths Like A Nincompoopの頭文字を取ったもの。
本来はとても常識では考えられないような走塁死のみをさす言葉だったのが、近年ではフォースアウト以外のほぼすべての塁上でのアウトをひっくるめてTOOTBLANと呼んでいる。
日本語ではそうでもないかもしれないが、このTOOTBLAN、英語だと思わず鼻先で笑い出したくなるような、独特のおかしい響きがある。アメリカでは大手メディアやチーム公式の番記者も使っており、ファンの間ではほぼ市民権を得ている頻出単語だ。2013年以降のすべてのTOOTBLANを記録しているTOOTBLAN Tracker(http://tootblan.tumblr.com)というウェブサイトも存在しているほどだ。
Maddux(マダックス)
意味:抜群の制球力と投球術を誇り、通算5008.1イニングで3371奪三振、999与四球の成績を残して2014年に殿堂入りを果たした希代の名投手、グレッグ・マダックス。そんなメジャーリーグの歴史に名を遺す偉大な投手の名を関したこのMadduxは、99球以内で9イニング以上を投げての完封勝利のことを指す。
これはもちろん、マダックスが少ない球数で打者を次々と打ち取ることを得意としていたことからきている。ジェイソン・ルクハートというブロガーによって考案された。
ここでMadduxに関する記録を見てみよう。すべての投球数をボックススコアに記録するようになった1988年以降、この偉業を最も多く成し遂げているのは他ならぬマダックスで、その数13回。2位のゼイン・スミスがほぼ半分の7回だから、いかに彼が傑出していたかがわかる。
現役ではジェームズ・シールズ、バートロ・コロン、ヘンダーソン・アルバレスの各4回が最多。まだ25歳と若いアルバレスには記録更新のチャンスがわずかながらあるかもしれない。
日本人投手でこれまでにメジャーの舞台で達成しているのは、2005年6月14日の大家友和と2008年7月7日の黒田博樹の2人のみ。
もちろん、日本プロ野球や甲子園で99球以内の完封が達成された際にもこのMadduxという言葉を使うことができる。2015年はオリックスの西勇輝やヤクルトの山中浩史ら数名が達成した。
文=山崎和音(やまざき・かずと)