4月の戦いを終えたプロ野球。下馬評を覆して健闘をみせるチームや、反対に開幕前の評価を裏切る形で調子に乗れないチームもありと、興味深いペナントレース争いが繰り広げられている。
そこで再び手にとって欲しいのが、今年2月に発売した『別冊野球太郎2014球春号〜プロ野球[呪い]のハンドブック』(発行・イマジニア株式会社ナックルボールスタジアム/発売・廣済堂出版)だ。12球団別に呪いポイント(=チームの課題、ファンとしてはより応援するべき状況)がびっしりと書かれているこの本を読み返せば、応援するチームのペナントレース序盤戦の好不調の理由について、ひと味違った視点で検証できる。
このコーナーでは、ペナントレース序盤戦をふまえ、各球団の「呪い」は払拭されたのか、そして、これから解き放ちたい「呪い」は何か、考えてみた。それでは今週は、昨季セ・リーグでAクラス入りした3球団にクローズアップしてみよう。
△2013年セ・リーグ1位:巨人の応援ポイント▽
◎この呪いは振り払った!?
戦前はブッチぎりでセ・リーグの首位を快走すると思われた巨人。しかし、5月6日試合終了時でリーグ3位だが、1位・広島とは2ゲーム差で、4位以下を大きく引き離し、十分なスタートを切った。
振り払った「呪い」は、今季から新加入した片岡治大が解いた“二塁手の呪い”だろう。昨季、リーグ制覇した巨人打線のなかで、二塁手を務めた選手のOPS(出塁率と長打率の合計値)は全ポジションで唯一の5割以下だった。だが今季は6日現在で、32試合中27試合で二塁手のスタメンを片岡が務め、OPS.751と活躍している。さらに過去、5月に高打率をマークしており、2010年の打率.316、2011年の打率.318、2013年の打率.318と、ここ4年で3度も打率3割超。これからの季節、片岡の活躍はさらに期待できるはずだ。
勝率は6割前後を記録していても、すべてが順調に進んでいるわけではない。特に、投手陣の不調が大きく、エース・内海哲也はまだ勝ち星を挙げることもできず、盤石と思われた“スコット鉄太朗”と呼ばれたスコット・マシソン、山口鉄也、西村健太朗らがいずれも不安定。特にマシソンと山口は近年にない不安定さを露呈している。
再燃した統一球問題もあったなかで、デリケートになりつつあるが、“ドームランの呪い”を払拭できていない。巨人は6日現在、東京ドームで13試合を開催。うち巨人は14本塁打を放っているが、同時に12被本塁打も記録。また、2012年、2013年と被本塁打1本の山口が既に1本塁打を浴び、2012年に1本、2013年に2本、これだけしか本塁打を打たれていないマシソンが今シーズン既に4本も本塁打を打たれている。
他にも阿部慎之助の不調も深刻だ。ここまで打率は2割前後と、例年にない打撃不振に陥っている。開幕前には首痛を、開幕後は左ふくらはぎ痛を発症し、満身創痍の状態だ。
しかし、こうしたピンチを埋めるのが、新加入の選手たちだ。前述した片岡のほか、井端和弘やアンダーソンらがその穴を埋める活躍をみせており、さらに5月下旬からはキューバ代表の新助っ人・セペダが入団。この巨大戦力をどう使いこなしていくのか、ポイントは原監督の采配力になりそうだ。
△2013年セ・リーグ2位:阪神の応援ポイント▽
◎この呪いは振り払った!?
オープン戦不調で心配された阪神だったが、開幕後は絶好調。現在もセ・リーグの上位争いを演じている。阪神の「呪い」といえば、この本のきっかけになった「7回終了時点で負けている試合で逆転することなく敗れる」。2010年9月19日から足かけ3年間で130連敗も続いた。昨季5月12日のヤクルト戦でその呪いに終止符を打ち、その後6勝と逆に強さを発揮した。今季も引き続き「強さ」となるか、再び「呪い」に堕ちるのか、というところで、早くも開幕2戦目の巨人戦で逆転勝利。
2-3で負けていた8回にマシソン(巨人)を攻略して同点に追いつき、9回には勝ち越した。さらに4月6日のヤクルト戦では5-8で迎えた8回に打線が爆発。一挙6点を取って逆転し、15-8で今季2勝目を挙げた。今年も「逆転の虎」に期待しても良さそうだ。
やや気になるのが、2年目を迎えた藤浪晋太郎の調子だ。6日現在で2勝2敗、防御率4.19と、高卒ルーキーでありながら防御率2.75に収めた昨季の安定感が発揮されない。現在は好調な打線や、ルーキー左腕・岩崎優がなんとかがんばっているが、チームとしては藤浪が2年目のジンクスに見舞われるようだと、シーズン後半戦やポストシーズンで大きな不安要素になってしまう。
キャンプから物議をかもした新助っ人ゴメスはここまでは好調。西岡剛の離脱があっても、「君コン選手」として挙げていた上本博紀がレギュラーとして補う以上の活躍を見せている(5月3日に骨折が判明して戦線離脱)。前述した岩崎も含めて、若手の抜擢を進めているのは良い傾向といえるだろう。
今後を見据えるならば、やはり“左腕不足の呪い”は早めに解消したいところだ。セ・リーグ防御率No.1を誇る広島の唯一の弱点は、左投手が不足している点だ。
今季は2年ぶりに勝ち星をマークした篠田純平が心強い存在だが、飛躍を期待された戸田隆矢は6日現在、ファームで6試合に登板して1勝4敗、防御率4.33と、まだ時間が掛かりそうだ。
(文=編集部)