日本のプロ野球にビデオ判定が導入されて間もない頃、テレビの取材を受けた審判員の話と、肝心のビデオ機材を見て不安を覚えたことがある。
狭い部屋にテレビデオ(死語)がポツンと置いてあり、ビデオ判定が求められた際にはこれで映像をプレイバックする、ということだった。2010年といえば、すでに大型画面のテレビが普及していた。なぜそんな貧弱な機材を使用していたのかはわからない。しかし、これだと5人の審判員が議論するとしても、はっきりとジャッジできないのではないだろうか。
近頃では各球場とも再生機器はデジタル化されており、進歩は見られる。しかし、判定のもととなる映像は放送局が放映したもの。あくまで視聴者目線で撮られた映像がジャッジの元となっているのには疑問を拭えない。
なお、MLBではすべての試合を統合管理するスタジオを設置し、判定に役立つ映像を提供する環境が整っている。
近頃では、各スポーツでビデオ判定によるチャレンジが導入されており、野球への導入はやや遅めだった。北米においても野球のビデオ判定導入は北米4大スポーツ(野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケー)のなかでもっとも遅い導入だった。
そのなかで、われわれにお馴染みのビデオ判定は、テニスでのチャレンジの際に表示される「ホークアイ」の映像だろう。
テレビ観戦をしていて、どう見てもラインにかかっていないだろうと思うボールが、ホークアイの映像でクローズアップされるとわずかにラインにかかっていたりして、妙に説得力のある判定になる。
「ホークアイ」はもはや判定の補助というより、「動かぬ証拠」の提示になっている感がある。
今後、プロ野球におけるビデオ判定の位置づけはどうなっていくだろうか? 他国や他のスポーツの状況を鑑みるに、野球は技術的にもやや遅れ気味といえるだろう。
となると、ビデオ判定はこれから大きな進化を遂げることでプロ野球の試合にさらなる影響を及ぼし、試合の行方を左右する存在となることが予想される。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)