広島は本指名6人のみで、投手人名、捕手1人という内訳。そのうち、1軍デビューを果たしたのは1位の加藤拓也(慶應義塾大)、3位の床田寛樹(中部学院大)の2人のみ。
本誌『野球太郎』で「うまく成長すれば、球界を代表するクローザーになれる素材」と評されていた加藤は、4月7日にジョンソンの代役として初先発。本誌の予測とは違った形のデビューとなったが、9回1死までヤクルト打線をノーヒットに封じ初勝利を挙げるという快投を披露した。
その後は勝ち星を挙げられず、6月24日に2軍降格。それ以来、まだ1軍に昇格できていないが、7月のフレッシュオールスターでは、150キロ超のストレートを武器に1イニングを無失点に抑えている。
床田は2度目の先発登板となった4月12日の巨人戦で初勝利。ところが、4月19日のDeNA戦の登板後に左ヒジに違和感を覚え、治療しつつ様子を見ていたものの、良化しそうにないため、7月27日に左ヒジ関節の靭帯再建手術に踏み切っている。
本誌では「リリーフでハマればなおよしの即戦力左腕」との見立て。加藤同様に先発で勝ち星を挙げたため、それは当たらなかったが、プロ通用のポテンシャルは示した。来季の実戦復帰を待ちたい。
本誌がつけた広島の総合ドラフト採点は「60点」。新人6人中2人が1年目に勝ち星を挙げ、あとの4人は将来性重視の高卒選手ということを考えれば、この見立ては概ね正しかったと言ってよさそうだ。
阪神の指名は本指名のみの8人で、投手が5人、野手が3人。野手出身の指揮官の意向もあったか、投手に偏らない顔ぶれとなった。
その象徴とも言える存在が、12球団で唯一となる初手から野手単独1位指名の大山悠輔(白鴎大)だ。
その大山は、6月18日に1軍昇格を果たすとコンスタントに結果を残し、9月1日には、阪神のルーキーでは53年ぶりとなる4番に抜擢。ここまでの打率は.238ともう一歩だが、得点圏打率は.327と勝負強さを見せている。
本誌は「この年のドラフトではトップクラスのスラッガー」と評価。同時に「信念を持って育てることが阪神の使命でもある」と期待も込めていたが、いまのところ、チャンスを与えて伸ばしていこうという首脳陣の意向は感じられる。さらなる飛躍を楽しみにしたい。
大山以外では、右ひざを痛めて7月20日に登録抹消となってしまった糸原健斗(JX-ENEOS)が、開幕からベンチ入りし66試合に出場。本誌では「主軸にはなれなくても欠かせない存在となりそう」と評していたが、内野のユーティリティーとして、まさにその通りの働きを見せていた。
本誌の総合ドラフト採点は「55点」と辛めだったが、3位の小野泰己(富士大)も14試合に先発し1勝7敗ながらクオリティ・スタートは5回を数えているように、光るものは見せている。現状でもこの点数を上回る活躍と言って差し支えないだろうが、残りの選手たちの化け方次第では、この先、さらに大きく上回る可能性を秘めていそうだ。
本指名9人に育成枠1人の計10名の新戦力を迎え入れたDeNA。投手の駒はそれなりに揃っているDeNAだけに、投手と野手が半々のラインナップとなった。
そのなかでは1位指名の濱口遥大(神奈川大)が開幕から頭角を現し、シーズンが進むに連れ、より存在感を増してきている。ここまで9勝(5敗)を挙げており、年が年なら新人王当確となってもおかしくないレベル。京田陽太(中日)との新人王争いの行方も楽しみたい。
本誌では濱口を「右打者だけでなく、左打者の内角も突けるところが魅力」と評価。さらに、「調子がいい日はどんな球も打たれる気がしない」とも。確かに、9月3日の巨人戦では8回2安打無失点と圧巻のピッチングを見せた。
柳裕也(明治大→中日)、佐々木千隼(桜美林大→ロッテ)と、抽選に2連敗した末の1位指名だったが、柳が1勝、佐々木が3勝にとどまっていることを考えれば、クジを引いたラミレス監督は、相当な強運を発揮していたことになる。
濱口以外にも1軍デビューを果たした選手はいるものの、目につくのは、8月22日にリリーフ登板で初勝利を挙げた尾仲祐哉(広島経済大)ぐらい。本誌のドラフト総合採点は「73点」で、濱口のインパクトは絶大ではあるが、先々はともかく、現状ではこの評価をやや下回るぐらいの点数が妥当か。
文=藤山剣(ふじやま・けん)