近年のプロ野球界で、愛されキャラの地位を確立している「アライさん」こと新井貴浩(広島)。
おもしろエピソードには事欠かないが、昨シーズンで引退した黒田博樹が仕掛けたイタズラの顛末は傑作だ。
ある日、黒田が新井のバッグに重たい消火器を詰め込んだのだが、あろうことか新井はバッグの重さに疑問を抱かず、そのまま普通に持ち帰ったという。
パワーヒッターの新井とはいえ、さすがに異変に気づくだろうとツッコミたくなるのだが……。これには仕掛けた黒田もさぞ拍子抜けしたことだろう。
これが新井流の「ドッキリ潰し」か?
ちなみに新井に関する「笑える話」では、「弟の良太(阪神)にパクられた愛車の自動車税を払っていた」というエピソードがある。
広島の実家に帰省中の良太が「車が欲しい」と話をしたところ、父親は「2軍選手が100年早い。貴浩の車に乗ってろ!」と一喝。腹を立てた良太は、なんと兄の愛車に乗って名古屋まで帰ってしまったのだ(良太の当時の所属球団は中日)。
しかし、新井は車を奪われたとはつゆ知らず、キチンと自動車税を納めていたという……。消火器のいたずらの顛末に通じるスケールの大きな人間性を感じてしまう。
今季、開幕直後にメジャーリーグから電撃復帰した川崎宗則(ソフトバンク)。
メジャー時代に見せたひょうきんなパフォーマンスは記憶に新しいが、かつてのソフトバンク時代にも、球団歌『いざゆけ若鷹軍団』に合わせて大爆笑のダンスを披露したことがある。
内野手間のボール回しそっちのけで、スタンドに向いてキレのいいダンスを披露する川崎の姿に、ファンは大喜び。今季、6年ぶりに踊る川崎の雄姿(?)が見られるかもしれない。
お笑い芸人顔負けのノリのよさを持つ選手には、杉谷拳士(日本ハム)がいる。
バラエティ番組に出演したときはもちろんだが、グラウンドでもユーモアが大事とばかり、ある日の西武との試合の際には、試合前練習でビジターながらウグイス嬢に「イジり」を依頼したことがあった。
すると、ウグイス嬢は快諾。「お客様、ただいま内野も外野もベンチも守りますスイッチヒッターの杉谷拳士選手がバッティング練習をおこなっております。どうぞご注目ください」と、数回に渡ってアナウンスされた。
コメントの内容はお任せだったようだが、なんとも的を射ていて笑えない?
プロ野球人生につきものの契約更改。生活がかかっているため、毎年のように切実なコメントが飛び出すのだが、2017年は「水風呂」がキーワードに。
西では千賀滉大(ソフトバンク)が「ヤフオクドームの水風呂の温度をもっと下げてほしい」と交渉すれば、東では益田直也と細谷圭(ともにロッテ)がトークショーで「ZOZOマリンフィールドの水風呂が狭いので広くしてほしい」と訴えたのだ。
水風呂問題が同時多発的に勃発したのは何かの偶然か? じわじわ面白さがこみ上げてくる。
とはいえ、選手にとって疲労回復は死活問題。ぜひとも球団は彼らの声に耳を傾けてほしい。
天然系、芸人系、真面目系とキャラクターはそれぞれだが、プロ野球選手のまわりには、ファンを幸せにする笑いもある。
笑いを取るつもりのない選手もいるのだが、新井のような自然すぎる規格外の振る舞いには、ニヤリとせざるを得ない。
まさに神っているというべきか。これだからプロ野球のファンはやめられない。
文=森田真悟(もりた・しんご)