打率.285、17本塁打、68打点。
これが今季の森友哉(西武)の成績だ。高卒2年目のプレーヤーとしては破格の数字で、あの松井秀喜に匹敵する成績なのだが……。なぜか物足りなく感じてしまう。
そこで森のここまでのプロ生活を振り返りながら、「もっとできる!」と考える理由を探っていこう。
2013年、今や絶滅が危ぶまれる「打てる捕手」という称号を引っさげて、ドラフト1位で西武に入団。打撃はすぐにでも1軍で通用すると言われていたものの、球団は炭谷銀仁朗で犯した過ちを繰り返さないよう、1年目は2軍に留めて、プロの水に慣れさせる方針を取った。
しかし、オールスター明けにその方針は覆されて、1軍昇格。自身の出場6試合目でプロ入り初ヒットを放つと、その翌日からはなんと3試合連続でホームランをかっ飛ばす。高卒ルーキーとしては2人目の快挙を達成し、改めてその能力を見せつけた。
幸運にも、私はこの3試合連続ホームランの最後の1本を現地で見ることができた。当時を振り返ると、記録達成の喜びよりも「この場面でルーキーが打てるのか」という驚きの方が大きかったことを覚えている。
1点ビハインド、代打、対戦する投手は守護神の増井浩俊(日本ハム)。そんな絶体絶命のシーンで登場し、初球をものの見事にバックスクリーンへ運ぶ。
「もってる」という言葉だけで片付けたくない衝撃を受けた。
結果的にルーキーイヤーは、6本塁打を放った。しかし内容があまりにもドラマチック過ぎていたため、開幕1軍が予想される2年目の今季は、どれだけの成績を収めるのだろうと胸が高鳴った。
これが「もっとできる!」と思った理由の一つだ。
そして2年目。想定通り開幕1軍を勝ち取った森は、主に「6番DH」で138試合に出場。開幕直後から猛打爆発……とはならなかったものの、自身の出場14試合目で2本塁打を打つと、4〜6月で13本のアーチをかけた。シーズンの半分でこの本数、である。
あとは残り試合でどこまで上積みできるか。当時の森友哉には、多くのファンが「もっとできる!」と感じていたに違いない。
しかし、膨らむ期待値と反比例するように、森のバットから快音は生まれなくなった。オールスター史上2人目の10代(当時19歳)での本塁打を放つも、レギュラーシーズン7・8月のホームランがゼロに。早くも研究されたのか、開幕から一軍で出場し続けた疲れが出たのか、それとも自打球を当てた影響だったのか。
理由はいくつか考えられるが、この「トータルの成績では申し分ないが、内容が偏っている」ことが、物足りなさを覚えた原因だ。ただし、そんな中でも9月に4本のホームランを打ったことは、来季に向けての収穫になったはず。
だからこそ、「もっとできる!」と思わずにはいられない。
ちなみにオールスターの本塁打も、この目で見ることができた。代打で登場すると、思い切り引っ張った打球がロケットのように飛んでいきスタンドイン。歓声を上げる間もない、一瞬の出来事だった。
この大舞台での勝負強さは、清原和博(元西武など)や中田翔(日本ハム)に通じるものがある。
森はかつてインターネットですっぱ抜かれた姿もそうだが、最近も「オフ仕様」という理由で金髪にするなど、同じ系譜にいることを感じさせてくれるヤンチャな選手でもある。
その風貌を良しとしない野球ファンもいるが、逆に森は「結果が全て」のプロ野球の世界をよく分かっているとも思う。
見た目を取り繕って好成績を収めても、そこに自分らしさはない。ならばいっそ、自分を前面に出す。
「批判上等」
さすがに口にはしないが、行動からはそう発しているようにすら感じる。若干20歳にしてたどり着いた領域だが、これこそがプロ野球選手の生き様だ。ぜひ森には、ブレずに自分らしさを貫き通してもらいたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)