そんな鳥谷の野球人生において、最大のピンチだったのが昨季の大スランプだろう。開幕当初から調子が上がらず、ついに7月24日には5年ぶりとなるスタメン落ち。連続フルイニング出場は667試合でストップしてしまう。また、守備でもまるで草野球のようなエラーを連発するなど、その時点ですでに10失策。とにかく攻守に渡って精彩を欠いた。
その後、シーズン終了まで試合には出続けたものの、代打での起用も多く、最終成績はレギュラーとして定着した2005年以降ではワーストとも言うべき数字。30代半ばで、年齢的な衰えを懸念されても仕方ない状況に陥っていた。
今季も、キャンプインの段階では遊撃のレギュラー筆頭格は北條史也。鳥谷は三塁に入る新外国人・キャンベルの控えという位置づけだった。
ところが、キャンベルの故障により、開幕戦から「7番・三塁」で先発出場すると、いきなり4戦連続マルチ安打を記録。そこから大きく落ち込むこともなく、ここまでのシーズン打率も3割を越え、鮮やかな復活を遂げたのだった。
5月24日には顔面に死球を受け、バッターボックスでうずくまり、鼻から大流血。診断結果は鼻骨骨折だったものの、フェイスガードをつけて翌日もグラウンドに登場。数日は代打起用が続いたが、その後はスタメンに復帰し、8月に入って4割オーバーの打率を叩き出すなど、夏場に調子を落とすどころか、ますます安打の量産体制に入っている。
鳥谷の記録において、もうひとつ間近に迫っているのが通算の四球数の大台だ。現在、983四球で大台の1000まであと17個。これは現役最多で、歴代でも15位の大記録だ。先日、2000安打を達成した阿部慎之助の通算四球数が827個(2000安打達成時点)、あの長嶋茂雄でも通算969個だから、いかに鳥谷の四球数が多いかがわかる。
今季の四球数は60個で、残り30数試合ということ考えれば、年内に達成する可能性も十分。四球数の多さは出塁率に直結する。安定した出塁率の高さ、ひいてはチームへの貢献度も、見逃せない鳥谷の持ち味といえる。
(成績は8月21日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)