8月6日から夏の甲子園が始まった。これから約2週間で48試合が行われ、頂点に立つチームが決まることになる。今秋のドラフト候補や未来のスターたちも気になるが、今回は優勝校の予想をしてみたい。
筆者が気になる数校をピックアップしてみた。
通常の予想では本命とは1つだけ予想するもの。しかし、今回は2校を推したい。
まずはプロ注目の「打てる捕手」候補・有馬諒、滋賀大会で26回を投げ無失点の左腕エース・林優樹、そして昨夏の甲子園で打率7割を超えた住谷湧也を擁する近江(滋賀)である。
昨夏の近江は、甲子園の主役になった金足農(秋田)、そして吉田輝星(現日本ハム)の引き立て役となってしまった。対戦した準々決勝でサヨナラツーランスクイズを喫したのである。有馬はホームベース上で突っ伏し、林はマウンド上で呆然と膝に手をついた。あれから1年。悔しさを知る全国屈指のバッテリーが、滋賀県勢初の優勝に導いてくれることを期待したい。
思えば、昨夏を制した大阪桐蔭もその1年前にサヨナラ負けで聖地を去っている。同じことが起こってもおかしくはない。
そしてもう1校。激戦区の神奈川を強打で勝ち上がってきた東海大相模である。近江とは1回戦で激突する。つまり、1回戦を勝ち上がった方が優勝の本命ということだ。
東海大相模は神奈川大会7試合で83得点。決勝では大会記録となる24得点を挙げる圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきた。
打線はプロ野球の横浜、巨人で活躍した金城龍彦氏を父に持つ金城飛龍、強打の捕手・井上恵輔ら打率4割超えの選手がズラリ。
また、投手も神奈川大会で6人が登板しており、連戦にも耐えられる陣容が揃っている。2015年に全国制覇した際も小笠原慎之介(中日)、吉田凌(オリックス)と複数の投手をそろえていたことを思い出す。
最強バッテリーの近江、強打に加え層の厚い投手陣を揃えた東海大相模。注目の初戦を勝ち上がったほうを大本命としたい。
本命で2校を挙げたので、対抗は選ばす、注目校、そしてダークホースの学校に触れたい。
奥川恭伸を擁する星稜(石川)は当然、注目校。いたるところで優勝候補の一角として挙げられている。佐々木朗希(大船渡)、及川雅貴(横浜)、西純矢(創志学園)が地方大会で姿を消し、「四天王」では唯一の出場となった。それは奥川一人の力だけではなく、チーム力があることの証明でもある。
とは言うものの、奥川への依存は大きい。さらに、今年は例年に増して投手の酷使についての議論が巻き起こっている。ダルビッシュ有(カブス)や張本勲氏(元巨人ほか)もそれぞれの持論を展開したほど。外野の声が大きいことは間違いない。そのなかで、林和成監督が奥川をどのように起用していくのかが、ポイントとなりそうだ。休養を挟むのか連戦連投なのか……。チームの鍵は監督が握っている。
ダークホースには敦賀気比(福井)を挙げたい。福井大会では圧勝劇はなく、全試合ともに接戦をものにしてきた。4試合で本塁打はわずか2本。総得点は23点。一方で犠打の数は11。打ち勝つ圧倒的な強さはない。どちらかというと負けない野球で勝ち上がってきた印象がある。しっかりと接戦をモノにしてきた勝負強さを発揮できれば甲子園でも面白い存在となりそう。
プロの世界では吉田正尚(オリックス)、西川龍馬(広島)らが母校の甲子園出場を祝うかのように調子を上げてきた。先輩たちの活躍に負けないプレーで夏初制覇を目指す。
筆者の「思い入れ枠」として國學院久我山(西東京)を挙げたい。前回の出場は井口資仁(元ロッテほか)が2年時のこと。池田(徳島)にサヨナラ負けを喫し初戦敗退。涙を飲んでから28年。ついに聖地甲子園へと戻ってきた。
プロが注目する大型スラッガーが在籍しているわけではない。150キロを投げるエースがいるわけでもない。にもかかわらず、激戦区の西東京を勝ち上がってきた。組み合わせに恵まれたラッキーパンチではなくだ。準々決勝からの3試合は早稲田実業、東海大菅生、創価といずれも甲子園出場経験がある強豪ばかり。
その内容を振り返ると早稲田実業戦は延長戦の末にサヨナラ勝ち。東海大菅生、創価との試合はともに2点差で競り勝った。
激戦区で苦しい戦いをしてきたからこそ、甲子園の舞台では気持ちを楽に戦えるのではないか、といった思いが含まれている。ドラフトで言うところの「ロマン枠」として久我山を挙げたい。親しみを込めて「久我山」と略したが、それは筆者の母校だからである……。
文=勝田聡(かつた・さとし)