しかし、サイクル安打がプロ野球ファンの記憶に長く残るかといわれれば、ノーヒットノーランに比べて正直なところ、NOだろう。
そもそも日本ではサイクル安打の認知自体が遅れていた。
1965年、「ドクター・ベースボール」と呼ばれ、日本野球界にアメリカ野球を広めたダリル・スペンサー(阪急)が、サイクル安打を達成した際、記者が無反応なことに対して、
「おいおい、今日、オレはサイクル安打を打ったんだ。なんで誰もそれについて聞かないんだ」
と話したところからリサーチがスタートしているほどだ。
確かに連続本塁打やノーヒットノーランに比べて、印象は薄い。忌憚なくいえば“地味”だ。実際にテレビや現地で観戦した試合での達成、贔屓チームの選手の達成以外は記憶がだんだん薄れている。
しかし、難易度の高い大記録であることに間違いはない。そこで今回、2000年以降にサイクル安打を達成した13人(大島洋平を除く)を列挙してみた。
果たして何人覚えているだろうか? 全員覚えていた人はスペンサー並みの「ドクター・ベースボール」だ!
≪2000年以降のサイクル安打達成者≫
※所属球団、球場名は記録達成時
@ 松井稼頭央(西武)
2000年6月7日 近鉄戦(西武ドーム)
A ボイ・ロドリゲス(横浜)
2002年7月27日 広島戦(函館・オーシャンスタジアム)
B 井端弘和(中日)
2002年9月21日 横浜戦(ナゴヤドーム)
C ホセ・オーティズ(オリックス)
2003年5月3日 西武戦(西武ドーム)
C 福留孝介(中日)
2003年6月8日 広島戦(ナゴヤドーム)
D 稲葉篤紀(ヤクルト)
2003年7月1日 横浜戦(松本市野球場)
E 村松有人(ダイエー)
2003年7月1日 近鉄戦(大阪ドーム)
F 桧山進次郎(阪神)
2003年7月2日 中日戦(甲子園)
G 細川亨(西武)
2004年4月4日 日本ハム戦(札幌ドーム)
I アレックス・オチョア(中日)
2004年4月13日 巨人戦(東京ドーム)
J フリオ・ズレータ(ロッテ)
2007年9月22日 楽天戦(フルキャストスタジアム宮城)
K 小笠原道大(巨人)
2008年9月3日 広島戦(京セラドーム大阪)
L ライネル・ロサリオ(広島)
2014年9月2日 巨人戦(長野オリンピックスタジアム)
文=落合初春(おちあい・もとはる)