『野球太郎』が広島の補強ポイントに挙げたのは「即戦力投手」、「将来、柱になる素材型投手」、「内野手の底上げ」、「左のリリーフ要員」、「次世代の捕手」だった。「即戦力投手」から順に指名結果を見ていこう。
昨季まで絶対的エースだった前田健太がメジャー移籍。大きな穴があいたと不安視された投手陣だったが、終わってみればセ・リーグ制覇。マエケンの穴を感じさせなかった。
ジョンソンは沢村賞に輝く大活躍。野村祐輔は新人王に輝いた2013年以降、安定した活躍ができなかったが、今季は一皮剥け16勝とチームの勝ち頭に。ルーキーの岡田明丈は勝ち星こそ少ないが先発、中継ぎ両面での起用に応えた。
だが、今季10勝を挙げた大黒柱・黒田博樹が引退。またも投手陣に大きな穴があいてしまった。そんな心配が頭をよぎる。
となると「即戦力投手」の指名は不可欠。もちろん、広島首脳陣もそのことを十分に理解している。そこで田中正義(創価大)、佐々木千隼(桜美林大)という目玉候補を果敢に1位指名したが、ことごとくくじを外してしまった。
しかし、「外れ外れ1位」で指名した右腕・加藤拓也(慶應義塾大=写真)と3位の左腕・床田寛樹(中部学院大)は即戦力候補。ともにチームでは主に先発として登板しているが、リリーフ向きと見られる。
加藤はがっちりした体格から最速153キロのストレート、スライダー、スプリットを投げ込む馬力型。力で押すだけのタイプに見られがちだが、今年は変化球の使い方が巧みになった。短いイニングを全力で抑える投球の方が合っていると感じさせる上に、スプリットを使えるのでストッパーの適性もある。
床田の特徴については補強ポイントC「左のリリーフ要員」とも被るので、そこで詳しく紹介したい。
今回のドラフトでは「高校BIG4」の一角・高橋昂也(花咲徳栄高)を2位で指名した広島。高橋は「将来、柱になる素材型投手」の点でピッタリとハマる。
高橋は最速152キロのストレートを誇る左腕。これに加え左投手では珍しくフォークを操る。今夏は強豪揃いの埼玉大会で37回無失点。制球はまだ甘いが、伸びしろは十分。ストレートもまだ速くなりそうなだけにロマンを感じさせる投手だ。
二塁には不動のレギュラー菊池涼介がおり、遊撃は田中広輔がレギュラーに定着。三塁では安倍友裕が台頭。内野陣は充実している。
こういう時にこそ、さらに戦力の底上げしておきたいが、今回のドラフトでは内野手の指名はなかった。
広島は左の先発、リリーフ投手がともに不足している。それでも今季は、先発陣はなんとかやりくりできたが、リリーフはそうはいかなかった。
前述した3位指名の床田は最速148キロのストレートに加え、スライダー、カーブ、チェンジアップを操る。ストレートの最速を更新し続けているので、まだまだ能力の底を見せていない。
ストレートが速く、カーブも使える床田を左のリリーフとして起用できればチームにとっても大きいはず。床田の起用法に注目したい。
捕手は37歳の大ベテラン石原慶幸と會澤翼の併用が続く。長く石原とチームを引っ張った倉義和は今季を最後に引退。若手捕手の台頭が必要だ。
捕手では4位で坂倉将吾(日大三高)を指名。強豪チームで2年秋から捕手を務め、自慢の強肩と投手のよさを引き出す配球が高く評価されている。二塁送球は1秒80、打っても高校通算25本塁打とまさにセンスの塊。「打てる捕手」としての期待もかかる。
次世代の広島の正捕手になるよう、大きく育ててほしい。
【総合評価】60点
黒田の穴を埋める即戦力投手を是が非でもほしいチーム事情から、田中に佐々木と指名していったが競合に敗れた広島。「外れ外れ1位」の加藤は即戦力と期待される一方、コントロールに不安点もある。
結果的に即戦力よりも素材派を多く指名した今回のドラフト。5位のハーフ右腕・アドゥワ誠(松山聖陵高)は196センチの長身。プロで体を作り、長所の長身を生かした投球をしたい。
6位の長井良太(つくば秀英高)は最速149キロのストレートが武器。たった2年間で25キロ近く球速を上げるなど、潜在能力は計り知れない。
くじを2回外したことで、総合評価は少し低いが、それでも広島が常勝軍団になるために果敢に挑んだドラフトだったといえる。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)